このたび私どもは「北朝鮮人道支援の会」を設立いたしました。
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対しては、日本人拉致疑惑、ミサイル発射、さらに最近の不審船事件などをめぐって、日本国民の間に不信感と敵対感情が高まっています。
しかし、これらの問題は、日朝国交正常化が実現して両国間の対立が解消し、日朝両国民の間に相互理解が進み、同時に南北対話も進展して、朝鮮半島における冷戦構造が解消するならば、おのずから解決し、克服されるものであります。
私どもは、必ずしも金正日体制を支持し、同国の政策に賛同しているわけではありません。個人としての立場、主義、主張はさまざまであります。しかし、1995年の大水害以来、同国が毎年のように自然災害に遭遇し、深刻な食糧危機に見舞われている事実に目をそむけ、これに対し拱手傍観すべきではないという点で結束しています。
食糧危機の原因は、自然災害のみならず、農業構造の欠陥にあるという指摘は、FAO(国連食糧農業機関)をはじめとする国際機関からも出されていますが、北朝鮮当局と同国人民の自助努力ならびに国際援助で改善され、西暦2002年ごろまでには危機は克服されるものと予測されています。
したがって当面必要なことは、慢性的食糧不足と医療品の欠乏に対し、人道主義的立場で支援することであり、そのための資金あるいは物資も送り届けることであります。欧米諸国も韓国も官民を挙げて援助の手を差し伸べています。
国連は過去数次にわたって緊急人道援助を呼びかけています。人道援助というのは、相手の国の政体・政策に関係なく、無条件で実施し、供与すべきものであります。人道援助を通して相互理解も深まります。特に食糧難のしわ寄せの犠牲になりがちな子どもとお年寄りに対する援助は急務であります。
不幸にして日朝関係は緊張状態にあります。北朝鮮の政治体制は硬直し、反日感情も根強いものがありますが、民間レベルの支援活動がわずかなりとも対日感情の好転をもたらし、国交正常化の早期実現に向けての雰囲気づくりに貢献しうることを日常の交流と接触を通じて私どもは知っています。
同時に、日本国内で北朝鮮支援の輪をひろげることが、同国がおかれた立場を冷静に客観的に理解する道につながり、感情的反発を超えて、日朝友好と親善に資する方途であると確信するものであります。皆さまのご協力、ご賛同をお願い申し上げます。
1999年4月1日 「北朝鮮人道支援の会」発起人・世話人一同
北川広和・吉川徹忍・桑畑優香・桑原千代・桜井善作・辛 淑玉・床井 茂
殿平善彦・長沼節夫・番場良造・古川隆史・前田康博・吉田康彦・若月 章