2005年2月05日
ブッシュ政権2期目の課題
ブッシュ政権2期目がスタートした。ブッシュ大統領は1月20日の就任式で、世界から「圧制」をなくし、「自由」を世界に広げることを2期目の使命とする決意を鮮明にした。通信社が数えたらfreedom を27回、liberty を18回、20分間の演説に両方あわせて45回繰り返した。
この演説は、イスラム教を邪教として、聖地奪回を目指して西欧諸国の王侯貴族が遠征軍を率いた「十字軍」思想、さらに近世の「大航海時代」にキリスト教を「未開社会」に広めた西欧諸国の「文明開化」の押し付けを想起させる。
「自由」は米国の独占物ではない。コンドリーザ・ライス新国務長官は、上院における指名承認の公聴会で、ベラルーシ、キューバ、イラン、ミャンマー、北朝鮮、シンバブェの6カ国を「圧制の拠点」と名指ししたが、「圧制」の定義、選別の基準が明らかではない。国連総会が認定したのならともかく、いかに超大国といえども、米国にその資格はない。
教育の普及、女性の地位、貧富の格差の度合いなどは、UNDP (国連開発計画)が「人間開発指数」として数値化しており、客観的基準が存在する。米国は総合評価で7位にとどまっている。
「自由」と「民主主義」は、建国以来の米国の理念だが、主権平等の原則からならる国際社会でこれを他国に強要するのは民主主義の原則に反する。日米両国は多くの点で価値観を共有するが、日本は独自のアプローチで民主主義実現に貢献し、米国の説得役を買って出るべきである。
ブッシュ大統領は2期目の終わる2008年末までに、外交上の歴史的業績を残すことを考えており、「イラクの民主化」を何としても達成したいところであろうが、前途多難。パレスチナ国家建設も至難の業。イラクには、内部に民族・宗派を異にする住民の対立があり、外部から流入しているテロリスト集団も存在する。他方、パレスチナには武装闘争に固執する「ハマス」が存在する。
これに対し、その気になれば実現可能なのが朝鮮半島の非核化である。北朝鮮は体制存続の保証を求めているにすぎない。米朝関係の信頼構築には時間がかかるが、ブッシュ=ライスのコンビはこの課題に真剣に取り組み、任期の終わりまでに米朝国交正常化が実現すると思われる。
【HP2005年2月5日掲示】