2009年2月25日
オバマ政権の日本重視は”表面(うわべ)”だけ
麻生訪米は政権浮揚のために個人プレーにすぎず、日米首脳会談は内容空疎だった。
国際外交では、プロトコール、つまり相手をどう遇するかが重要で、メンツを重んじ、相手のプライドをくすぐる言動で良好な関係を維持することが当事者の心構えとして不可欠だ。
オバマ政権の政策ブレーンは、日本政府と国民が、日本軽視・中国重視のアジア政策を打ち出すのではないかと疑心暗鬼になっていることを察知、ヒラリー・クリントン国務長官をアジア歴訪の最初の外遊先として日本に派遣。訪日時に麻生訪米を発表させ、来訪する最初の外国首脳として麻生をホワイトハウスに迎え入れた。
ヒラリーは、国務長官指名承認の上院公聴会で「日米関係はアジア太平洋地域における corner stone (礎石)」とぶち上げ、日本滞在中もこの言葉を繰り返した。さらに麻生を迎えたオバマは「日本は偉大なパートナー」と持ち上げて、日本人のプライドをくすぐった。
しかるに日米首脳会談は内容空疎だった。外国首脳を迎えて催される恒例の昼食会も夕食会もなく、会談後の共同記者会見もなかった。CNNは「たった1時間の会談のための1万1000キロの長旅」と麻生訪米を皮肉り、米国メディアもほとんど無視した。メディアの関心は当日(2月24日)午後から上下両院本会議でオバマが行った施政方針演説に集中した。
日本の新聞は「重層的日米同盟」と訪米の意義を強調したが、要するに、日本が金融危機・地球温暖化対策、アフガン支援などで対米協力を強化し、その代わり拉致問題解決への米国の影響力行使を期待するというものだ。「北朝鮮のミサイル発射準備(北は「人工衛星打ち上げ」と予告)をけん制」と見出しで報道した新聞(たとえば毎日新聞)もあるが、見当違いだ。北の計画には何の影響もなく、麻生訪米など眼中にない。,発射の狙いは、(1)核抑止力の実証によるオバマ政権への直接交渉呼びかけ、(2)対南優位の証明、(3)国内向けには体制引き締め、に尽きる。