2009年12月16日
普天間をめぐる日米合意白紙化は政権交替なら当然
鳩山首相は、普天間基地移転の先送りを米政府に正式に通告した。政権交替にともなう政策の転換なのだから当然である。これで日米関係にひびが入るとか、不信感が深まるとかいう野党・自民党はじめ保守系メディアの主張は、いずれも杞憂である。
戦後の日本人には対米追従の行動様式が根づいてしまって、米国には楯つけないという縄縛から抜け出せないのだろう。これがDNAに定着しているのだろう。米国人歴史家ジョン・ダワーは、日本人は「敗北を抱きしめて」米国に追従してきたと断じている。その結果、「アメリカに楯ついたら大変だ」という強迫観念にとらわれているのだろう。
鳩山氏がオバマ大統領に”Trust me”と語ったのは、辺野古沖への移転を決めた日米政府間合意の履行を約束したもので、これに反する決定を下したのは、オバマ大統領をも裏切ったことになるという解釈が一部に流布しているが、これはむしろ「大局的に日米同盟を悪化させ、動揺させることはしないから心配無用」というメッセージを送ったと解釈すべきだ。
政権交替を機に政策を180度展開して米軍基地撤去を決めた例としてアキノ政権下のフィリピンがある。ニュージーランドも左派の労働党政権成立後の1987年に非核・反核政策に転じ、米豪との軍事同盟ANZASから脱退している。最近では、イラク戦争に派兵していたスペインが、総選挙で社会労働党が勝利して政権の座に就き、1400人規模の部隊を撤退させている。
政権交替を理由に政策転換し、国際合意を破っているのは、むしろ米国の”専売特許”だ。ブッシュ政権は、クリントン前政権が署名したCTBT(包括的核実験禁止条約)、温暖化阻止のための「京都議定書」を政権交替を理由に離脱した。オバマ現政権は、ブッシュ前政権がポーランドに約束した迎撃ミサイル基地建設、チェコに約束したレーダー網建設を、いずれも政権交替に伴う政策転換を理由に中止した。
要は、民主党がきちんと理由を説明し、日米同盟の将来についての展望を語ることだ。論理的な説明と将来展望に耳を貸さないオバマ政権ではない。