2008年9月07日
NSGの「米印原子力協定」承認を歓迎する/NPT至上主義は誤りだ
2008年9月6日ウィーンで開かれた「NSG(原子力供給グループ)年次総会」(加盟45カ国)は、NPT(核不拡散条約)非加盟のインドを「特例」として扱い、核物質・器材の輸出を認めた「米印原子力協力協定」を承認した。
これで米印協定は発効に要する最大の難関を超え、残すは米議会の承認のみとなった。米代表団は全力を挙げて協定承認に持ち込んだ。日本も最終場面で賛成した。
NSGは1974年インド最初の核実験のあと、これ以上の核拡散を阻止するために核物質と関連器材の輸出禁止を関係国が申し合わせたもので、NPT体制を支える柱となってきたが、インドの「例外扱い」は今後に課題を残した形になった。
インドがNPT非加盟国であることが最大の難題で、将来インドが核実験をした場合は協定を無効化するかどうかが焦点となったが、インドは最初から手足を縛られることを拒否、米国も同調して明文化されなかった。
ただしインドは隣国パキスタンとは異なり、過去に核拡散に関与した例はなく、もともとNPTが5大国の核保有を容認した「差別条約」であることに抗議して核開発を決断したという経緯があり、インドが原発推進することで地球温暖化抑止にプラスの効果も期待できる。
日本はメディアも市民団体もこぞって反対を表明したが、みな「NPT至上主義」の硬直した論理にしがみついていた。単純にNPT体制堅持を金科玉条にするだけでなく、NPTの「差別性」に注目して、インドを巻き込んだ形の核軍縮と核不拡散体制強化を論じるべきだ。
インドにNPT加盟を求めるなど国際政治に対する無知もはなはだしい。北朝鮮やイランがこれを知って、ますます核放棄に応じなくなるということもない。インドがあくまでも「特例」として扱われたことを知らないほど、彼らは愚かではない。