2008年2月01日
「申告」をめぐる米朝交渉の停滞は一時的
朝鮮半島非核化のプロセスが止まっているように見えるが決してそうではない。
2007年2月13日の北京合意からまもなく1年になる。合意の第一段階として寧辺地区の核施設の「稼動の停止」は完了、現在は第二段階として既存の核施設の「無能力化」作業が進行中だ。作業は3月中旬までかかるとされているが、米国の技術者が現場で作業しており、日本の専門家2名も12月に作業を検認している。
第二段階のもうひとつの柱が「すべての核計画の申告」。北朝鮮が昨年末までの期限にこれを行わなかったと報道されたが、北朝鮮はこの報道を否定、11月に米側に「申告」を手渡したとしている。<米紙ワシントン・ポストによると、米側に伝えられた「申告」の内容は、「プルトニウム備蓄総量は30キロ、高濃縮ウラン生産計画は存在しない」というもので、「おおむね妥当だ」と、ISIS(科学・国際安全保障研究所)のデイビド・オルブライト所長は語っている。>
しかし米政府としては、「この申告は不完全なもので、正確で完全な申告を議長役の中国に提出しなければならない」という立場だ。他方、北朝鮮側は「無力化と申告は“同時行動の原則”で進められなければならない。米国は“テロ支援国家”指定解除の約束を守っていない」と逆襲している。
以上が現時点における米朝の対立点だが、相互不信から来る駆け引きで、まもなく解決するだろう。ワシントンでは、米朝合意に批判的なネオコン勢力が息を吹き返し、ブッシュ政権内でゆり戻しを試みている。これがテロ支援国家指定解除の遅れになっている。しかし「無能力化」作業は順調に推移しており、たとえ不完全でも「申告」も行われている。
ブッシュ大統領が任期中最後の一般教書で北朝鮮に触れなかったのは、朝鮮半島非核化を諦めたからではない。微妙な段階にあって、北を刺激しない方が賢明と判断したからだ。金正日総書記も訪朝中の王家瑞・中国共産党対外連絡部長に「困難は一時的なもので克服できる」と語っている。
2月26日には、ニューヨークフィル(交響楽団)が訪朝し、平壌で演奏、これが全世界に生中継される。それまでに米朝関係は着実に進展するだろう。