2008年10月11日
ポスト金正日を論じるのは時期尚早
朝鮮労働党創立63周年記念日の10月10日に金正日総書記が姿を見せなかったからといって、彼が重病だとは限らない。昨年はマスゲーム「アリラン」を党・軍・政府幹部と共に観賞したが、06年は姿を見せず、それ以前も現れたり、現れなかったりしている。
朝鮮中央通信は、4日、金総書記が金日成総合大学で同大学と平壌鉄道大学チームのサッカー試合を観戦したと伝えた。映像も写真も公開されていないので真偽のほどは定かではないが、少なくとも「健在だ」というメッセージを国際社会に発信したかったことは確実だ。
さらに11日、人民軍部隊を視察する金総書記の写真を公開した。これも正確な日付は不明だが、写真では、サングラスをかけながら、元気な様子がうかがわれる。
日本のメディアは”ポスト金正日”論議をくり広げ、金正男(長男、37歳)、金正哲(次男、27歳)、金正雲(三男、25歳)の後継者争いを面白おかしく報じているが、時期尚早である。金ファミリーが何らかの役割を果たすにせよ、三代目への世襲は社会主義国にあるまじき事態だ。中国は支援継続の条件として世襲には断固反対しているといわれるし、金正日自身も家督を継ぐように、党・軍・政府の最高責任者のポストを息子のいずれかに委譲できると思ってはいないだろう。
金正日総書記が執務に支障をきたした場合は、党・軍・政府の幹部から成る「集団指導制」が機能を果たすと思われる。金総書記が8月14日以降に脳卒中で倒れたとしても、その後2カ月間の北朝鮮の動向を見る限り、不自然な点は全くない。
核計画の「申告」をめぐる米朝対立で、ブッシュ大統領がテロ支援国家指定解除の履行を先延ばしにしてきたことに対する北朝鮮の一連の抗議行動(「無能力化」作業の中断、IAEA査察官立入り禁止、関連施設再稼動の動きなど)はきわめて整然と、計算された形で進められており、金総書記が”陣頭指揮”をしていても、していなくても同じ経過をたどったであろう。