2008年10月24日
北の日本ゆさぶりに一喜一憂するな/ただし拉致をめぐる強硬路線は効果なし
北朝鮮の核廃棄の見返りとして、北に経済・エネルギー支援をするという北京の6者協議の合意に反して、日本が「拉致問題に進展がない限り」支援には応じないという強硬路線を貫いていることは各国の批判の対象となっている。ブッシュ政権も、表向きは理解を示しながらも、日本の硬直した態度に手を焼いているのがホンネだ。
これに対し北朝鮮は合意の履行を迫り、6者協議からの日本の排除を要求する動きを示しているが、こうした動きは今回が初めてではなく、一喜一憂する必要はない。他方、米国はオーストラリア、ニュージーランドに日本の肩代わりを要請、合意の履行に真摯に取り組んでいる。これも初めてではない。
地域の非核化をグローバルな関心事ととらえ、北朝鮮の核廃棄に見返りに、域外諸国からの資金拠出を求めたのは、クリントン政権下の1994年の「米朝枠組み合意」にさかのぼる。この合意で発足したKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)では、当初、日韓両国だけが軽水炉2基の建設資金を負担することになっていたが、のちにオーストラリア、ニュージーランド、EU(欧州連合)などが資金拠出に応じ、多国間のプロジェクトとなった前例がある。地域の非核化実現に国際社会が広く関与するのは望ましい。
ただし、オーストラリアが日本の肩代わりをしたからといって、北の要求どおりに日本が6者協議から排除されることにはならない。米国が同意するはずがないからだ。かといって、日本が北支援拒否の強硬路線を貫いても、北が態度を軟化させ、拉致問題が”解決”に向かう可能性もない。
北が態度を軟化させるとすれば、日本が「入口論」を改め、日朝平壌宣言を履行し、国交正常化交渉を再開、”過去の清算”に応じることが前提である。いわゆる「出口論」だ。
何度もくりかえすが、拉致問題には高度の”政治決着”しかない。現状では、オバマ政権登場後の米朝直接交渉の進展にあわせて、対米追随するしかないだろう。そのときが来るのは、来年の春以降になるだろう。