2009年1月22日
国際社会はオバマ大統領に期待過剰
米国民のみならず、全世界の期待をになって、バラク・オバマが米史上初の黒人として第44代大統領に就任した。「宣戦布告」した国際テロ組織「アルカーイダ」指導者オサマ・ビン・ラディン以外は、こぞってオバマ登場を歓迎し、金融危機・不況対策、紛争解決、和平実現・・・に、それぞれ希望を託している。
米ソ冷戦終結後20年、世界は少しも平和にならず、核の脅威は衰えず、テロは続発し、地球温暖化は進み、挙句の果てはサブプライム・ローン破たんで資本主義は崩壊、国際社会には難題が山積しているだけに期待がふくらむのは無理もない。しかもオバマは、強烈なカリスマ性とスター性を備えた雄弁家、彼の一言一句に私たちが注目したのは当然だ。
しかし世界は多極化しており、米国の動向だけで世界が変わるわけではない。しかも大統領に強大な権限が集中しているとはいえ、米国は議会制民主主義の国、巨大官僚国家でもある。大統領の一存で、たちどころに政策が一変するわけではない。
人権無視として批判の強かったグワンタナモ強制収容所閉鎖は即時決定した。16カ月以内のイラクの米軍撤退も公約通り実現するだろうが、あとはどれも簡単ではない。米軍増派が決まってもアフガニスタン情勢が好転する見込みは薄い。中東和平も困難。イランの核開発も止まらないだろう。不況対策は超長期戦。300万の雇用創出を見込む「グリーン・ニューディール」は10年計画だ。オバマ在任中に成果をあげられるかどうか定かではない。
朝鮮半島非核化も長期戦になる。北朝鮮は、先手を打って、韓国が米軍の”核の傘”を離脱し、朝鮮半島全域から核の脅威がなくならない限り、核廃棄には応じない意向を表明、ハードルを高くしている。他に優先課題が多いことからも、米朝関係が動き出すのは、就任後半年くらい先になるだろう。