2009年6月17日
日本の対「北」全面禁輸は無意味かつ逆効果
日本政府は、6月16日の持ち回り閣議で、北朝鮮向けの輸出全面禁止ならびに外為法違反で刑が確定した在日外国人(朝鮮人)の再入国禁止などの追加制裁を決めたが、無意味かつ逆効果だ。「逆効果」というのは、拉致問題の”解決”はますます遠のくという意味だ。
河村健夫官房長官は「拉致・核・ミサイル問題の一括解決に向けた措置で、北朝鮮の自制を促すもの」と説明しているが、一連のミサイル発射と核実験をめぐる国連安保理決議1874が制裁として求めているのは、あらたに「武器の輸出」ならびに決議1718(2006年10月)ですでに禁輸の対象となっている「核・ミサイル関連部品」と「ぜいたく品」に限られ、全品目の禁輸ではない。
同時に「核・ミサイルに関連する計画に貢献する金融サービス・金融資産の移転防止」などの金融制裁を課してはいるが、北朝鮮に在住する親族への送金で外為法違反の罪に問われた在日朝鮮人に対する処罰などは的外れだ。「一般国民のニーズに対応する人道目的の金融支援」は、わざわざ禁止の対象から除外されている。
今回の措置で北朝鮮が政策転換し、事態が「拉致・核・ミサイル問題の一括解決に向かう」可能性などかけらもない。日本の対「北」輸出は8億円(2008年)、輸入はすでにゼロだ。北朝鮮の貿易総額に占める日本のシェアは0.2%にすぎず、全面禁輸はなんらの痛手にならない。これでもか、これでもかと憎しみをぶつけているだけだ。その間、中朝貿易は総額2800億円に達し、増加の一途をたどっている。
最近、田原総一朗氏が「拉致問題打開のために麻生首相よ、訪朝して金正日総書記と談判せよ」と提唱(朝日新聞6月13日付朝刊)している。その趣旨には賛同するが、麻生内閣が打ち出している施策は全く逆方向だ。拉致問題を”解決”したいと思ったら、まず日本の単独制裁を解除し、そのための雰囲気作りをしなければならない。麻生首相であろうと誰であろうと、単独制裁を課したまま訪朝しても何の成果もあがらないだろう。