2009年8月20日
金大中氏の太陽政策の”功罪”に異論あり
18日死去した金大中・元韓国大統領の「功罪は相半ばする」というメディア報道には賛同しかねる。主要全国紙は19日から20日にかけて社説や署名入り記事で同氏の功罪を論じ、太陽政策が南北関係の改善と緊張緩和に寄与したことを評価しながらも、北朝鮮の核開発を阻止できず、今日の事態を招いたと指摘している。見当違いも甚だしい。
韓国の大統領が誰であっても、核開発、核実験、核保有に至る北朝鮮の選択を覆すことはできなかったであろう。金正日総書記(国防委員長)にとって核とミサイルは唯一の対米交渉カードであり、核抑止力は米国の脅威に対抗するためだからだ。彼の念頭には米国しかない。当然である。冷戦終結20年を経て、朝鮮半島に冷戦構造を残し、朝鮮戦争をいまだに休戦状態のまま放置しているのは米国なのだ。
おりしもワシントンにブッシュ政権登場が決まったのが2000年11月、翌01年1月就任とともに、チェイニー副大統領以下ネオコン主導のもとに北朝鮮のレジーム・チェンジ(体制転覆)を画策した時期が金大中政権の後半と重なったのは不幸だった。北が核開発のピッチを早めたのはブッシュ政権1期目のこの”愚策”のせいであり、金大中氏の功績をいささかなりとも減じるものではない。
韓国には今日なお国防主権がなく、有事の際には韓国軍全軍は米軍(国連軍)の指揮下に入る。北は長い間、韓国を米国の傀儡政権とみなしてきた。それでも金正日が2000年6月、金大中をピョンヤン空港に出迎えて南北首脳会談に応じ、「共同宣言」に署名した歴史的意義は大きい。南北が主体的に平和統一に努力する意思を確認し合ったからだ。
もう一度くりかえす。北に核放棄を決断させ、朝鮮半島非核化を実現できるのは米国しかない。オバマ大統領がどう取り組むかに北東アジアの平和と安全保障がかかっている。