2010年1月27日
「朝鮮国立交響楽団」米国公演の実現を望む
1月27日付『読売新聞』朝刊は、「オバマ政権が北朝鮮の国立交響楽団の米国公演を今春にも受け入れる方向で動いている」と伝えている。朗報だ。2008年2月のニューヨークフィル平壌公演の答礼としての招聘で、国務省がビザ発給を検討中という。同時に、北朝鮮政府高官を米シンクタンクが米国に招待する計画もあるとされ、そうなれば米朝高官協議再開の機会になると期待されている。
私の新著『北朝鮮を見る、聞く、歩く』(平凡社新書)でも紹介しているが、北朝鮮の芸術水準はきわめて高く、国立交響楽団のレベルの高さは、平壌で練習実演を指導したニューヨークフィルの面々も絶賛していた。実現すれば米朝国交正常化に先立って文化交流が進み、関係促進の弾みとなろう。
ひるがえって、日朝関係は拉致問題をめぐる日本政府の単独経済制裁で凍結状態で、打開の動きは見られない。いくら制裁を続けたところで拉致問題が”解決”するわけではない。制裁はすでに6年越しだが、北朝鮮当局が動揺したり、譲歩する気配はなく、ますます怒りと不信感を強めているばかりだ。「北風」でなく「太陽」で、「圧力」でなく「対話」で、相手の心を開く努力をしなければ拉致問題”解決”の糸口もつかめない。
とすれば、日本も日朝文化交流を再開してオーケストラの相互公演を企画してみてはどうか。おりしも昨年7月の横浜に続いて、「北朝鮮映画祭」の大阪、名古屋開催の動きが進んでいる。日朝間に張りつめた氷が溶け出す機運が高まることを期待したい。