2010年2月21日
朝鮮学校の高校無償化除外は、根拠なき差別
鳩山政権は平成22年度から全国の高校授業料無償化の公約を実施する計画だが、中井拉致問題担当相が、在日朝鮮人の子弟が通う朝鮮学校を適用除外するよう川端文科相に要請したと、2月21日付の産経新聞、朝日新聞などが伝えている。いわれのない差別だ。
中井氏は、その理由として拉致問題が未解決であることを挙げたというが、朝鮮学校と拉致問題は何の関係もない。朝鮮学校は全国28の都道府県に、幼稚園から大学(朝鮮大学校)まで140校あり、日本の高校に相当する高級学校は10校ある。在籍しているのは在日朝鮮人の子弟のみならず、在日韓国人子弟も多く、約半数を占め、総数1万人にのぼる。
文科省の差別政策で、いわゆる「一条校」でなく、「各種学校」扱いされているが、日本の高校と同じカリキュラムにもとづいて授業を行っており、近年は日本の国公立・私立大学のほとんどが朝鮮学校卒業生に受験資格を与え、広く門戸を開放している。
しかるに、朝鮮学校に対する地方自治体からの補助金は全国平均で、日本の公立学校の10分の1、私立学校の3分の1にも満たない。(以上、在日朝鮮人教職員同盟中央本部の資料による。)
文科省はまだ結論を出していないが、拉致問題未解決を理由に無償化の適用除外するのは、八つあたりに等しい。日本政府は、過去6年、北朝鮮に対してありとあらゆる経済制裁を実施しているほか、在日朝鮮人に対する「法の厳格適用」と称して人権抑圧に等しい差別政策をとってきたが、何の成果もあげていないではないか。拉致問題はいくら圧力をかけても“解決”する筋合いのものではない。
オバマ米大統領も、昨年11月訪日の際のサントリーホールにおける演説で、「北朝鮮は拉致問題について十分に説明する必要がある」と述べた。要するに、背景、状況、事実関係、事後処理などについて、まだ説明が足りないというのだ。北にそれを期待する以上、日本も善意の証しとして経済制裁を解除、せめて人道上の対応措置として、万景峰号92の新潟入港を認める必要がある。高校無償化の朝鮮学校適用除外要求は、拉致問題の”解決”に逆行する暴挙だ。