2010年3月25日
クロマグロ規制反対における日中連携の成果を生かせ
中東カタールの首都ドーハで開催されたワシントン条約締結国会議で、大西洋・地中海産クロマグロの国際取引全面禁止を求めたモナコ案が大差で否決された結果、寿司ネタのトロの値上がりが回避され、マグロ好きの日本人はひとまず安堵の胸をなでおろした。
欧米のメディアの中には、「日本外交の勝利」と報じたものもあったが、実際はアフリカ諸国に強い影響力をもつ中国が日本と足並みを揃えてモナコ案反対のキャンペーンを精力的に展開したからのようだ。中国は、トラの国内取引禁止を訴えるEU(欧州連合)案に反発、日本の同調を求め、その見返りとして、日本が猛反対するクロマグロ取引禁止の応援に回ったとされている。近年、マグロのトロを好む中国人富裕層が増えてきたという食文化事情も背景にあったようだ。
アジアで生息するトラは、ワシントン条約の「付属書1」に記載され、輸出入は全面禁止の対象になっているが、EU案は国内取引も規制しようというもので、中国政府はこれを内政干渉として強く反発していた。結局、国内取引禁止のEU案は棚上げされ、クロマグロ規制案否決とともに、日中共同戦線は勝利をおさめた。
国際会議で日中が連携して欧米の主張を葬り去るケースは珍しい。地球温暖化防止では日本は先進国側に立ち、CO2排出規制強化に賛成、中国は新興国の代表格として先進国主導の規制押しつけに反対、真っ向から対立した。2005年の国連創設60周年における日本の安保理常任理事国入り工作を総力を挙げて阻止したのは中国だった。
クロマグロ、トラに限らず、欧米諸国は環境保全・資源保護の立場から、規制の網を広げる動きを強めているのに対し、アジア・アフリカの新興国・途上国は内政干渉として抵抗し、対立の溝は深い。日本は海洋民族として漁業立国であり、独自の食文化を築いてきただけに、その点では欧米諸国と対立する要素が多い。
中国がモナコ案つぶしに全力投球したのは、トラの国内取引禁止の動きのほかに、欧米諸国がワシントン条約にもとづく規制をフカヒレの材料であるサメの禁漁にまで広げようとしている点にもあったようだ。いずれにせよ、東アジア共同体構築のためにも、日中の連携と協力の分野が広がることは望ましい。