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プロフィール

吉田 康彦

吉田 康彦

1936年東京生まれ
埼玉県立浦和高校卒
東京大学文学部卒
NHK記者となり、ジュネーヴ支局長、国際局報道部次長などを歴任

1982年国連職員に転じ、ニューヨーク、ジュネーヴ、ウィーンに10年間勤務

1986−89年
IAEA (国際原子力機関)広報部長

1993−2001年
埼玉大学教授
(国際関係論担当)
2001-2006年
大阪経済法科大学教授
(平和学・現代アジア論担当)

現在、
同大学アジア太平洋研究センター客員教授

核・エネルギー問題情報センター常任理事
(『NERIC NEWS』 編集長)

NPO法人「放射線教育フォーラム」顧問

「21世紀政策構想フォーラム」共同代表
(『ポリシーフォーラム』編集長)

「北朝鮮人道支援の会」代表

「自主・平和・民主のための国民連合・東京」世話人

日朝国交正常化全国連絡会顧問

学歴・職歴

北朝鮮人道支援の会

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  • ニューズレター

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主張・提言・コメント
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2010年4月19日

核セキュリティーとは何か/ワシントン・サミットの意義

オバマ大統領の提唱で、ワシントンで4月12−13の両日、47カ国の首脳が参加して、核セキュリティー・サミットが開催された。

核セキュリティーとは何か。政府・外務省は「核セキュリティー」と表記、NHK、民放各局もそれに従ったが、新聞の表記は「核安全保障」「核安保」「核保安」「核安全」とまちまちだった。

セキュリティー(security)とセーフティー(safety)は表裏一体の関係にあるが、safe(安全)であることが確認できて安心すること (feel secure) 、あるいは安全を確かめるための対策を講じることである。”Fasten your ssfety belt for your security" (あなたの安心のために安全ベルトをお締めください)のように使う。「安全保障」という日本語の訳語は固すぎる。一言でいえば「安心」である。

核・原子力の場合、nuclear safety といえば「原子力の安全(運転・管理)」であり、原子力事故が起きないようにすることだが、nuclear security といえば、核弾頭・核物質が密売買されたり、奪取されたりして、不法に使用されることのないようにすることを意味する。簡単にいえば「核テロ対策」のことだ。これはIAEA(国際原子力機関)が特別に定義した専門語である。

核廃絶は理想だが、人類が「核兵器廃絶」に成功する可能性はゼロに近い。自然界には「核物質がほぼ無尽蔵に存在しており、「核物質が廃絶」されることはない。地球温暖化対策として、CO2(二酸化炭素)を排出しない原子力発電の優位性が見直されており、新興国を中心に、世界各地で増える傾向にある。原料のウラン、プルトニウムは核燃料にもなるが、大量殺りく兵器にもなる。IAEAの査察は技術的には完璧に近いが、あくまでも査察対象の施設に限った話で、秘密核開発は不可能ではない。

オバマ大統領にとっての最大の関心事は「核テロ対策」だ。テロリストには、核攻撃を思いとどまらせる「核抑止」は通じないからだ。核弾頭が1発でもテロリストの手に渡れば世界は大惨事になる。濃縮ウラン、プルトニウムをばら撒く「ダーティーボム」(汚い爆弾)でも同様だ。

オバマ大統領が昨年4月、プラハで「核兵器のない世界」を提唱したのも、ヘンリー・キッシンジャー博士ら4賢人の「提言」が下敷きになっているが、彼らが「核兵器廃絶」を唱えたのも、アルカーイダのようなテロリストには「核抑止」が通じないからで、核兵器が非人道的残虐兵器だからではない。そこに道義性はなく、冷徹な打算と計算があるだけだ。

もう一度くりかえす。核セキュリティーとは「核テロ対策」のことであり、これが世界の最大の関心事になりつつあるという事実だ。そして「核」も「原子力」も同根・同義だという事実を忘れてはならない。

 

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