2011年3月21日
東電福島第一原発は世界の原子力産業の命運を左右
導電福島第一原発から放射能の拡散を防げるかどうかに全世界の注目が集まっている。原子炉建屋への給水車からの放水効果、東北電力からの冷却用電源確保などが順調なので、最悪の事態は避けられそうだが、予断は許さない。今後、一両日中の推移がすべてのカギを握っている。
いずれにせよ、マグニチュード9.0という大地震は1000年に一回の自然災害だと言われるが、死者・行方不明2万1000人(3月21日現在)という被害規模は決して想定外の数字ではなかったのだ。被害の大多数は、地震よりも大津波の影響だが、その点、地震国・日本の備えが不十分だったことは否定できない。福島原発も地震到来でで緊急停止したものの、炉心溶融一歩手前まで行ったのは、津波による被害の結果だった。東電の関係者も「津波の規模が想定外だった」ことを率直に認めている。
実は21年前の1990年、米NRC(原子力規制委員会)が「想像を超える規模の自然災害で、あらゆる電源が断たれ、原子炉がコントロール不能に陥る事態に備えた耐震設計、安全対策を十分に講じる必要のあることを事前に警告する報告書を作成、配布して原子力産業の関係者の注意を喚起していたのだが、東電はじめ日本の関係者はこの報告書を無視し、今日の事態を招いてしまったのだ。
日本で、耐震設計の強化、多重防護のさらなる強化の必要が叫ばれ、実施に移されたのは、2007年の中越沖地震以来だ。日本の原子力産業はチェルノブイリの逆風も吹かず、大過なく発展してきたたが、今回の東日本大震災は決定的な痛打となった。たとえ最悪の事態が回避されたとしても、当面、原子力推進のムードが高まることはないだろう。時あたかも、温暖化対策、原油価格急騰、相対的経済性などで、”原子力ルネッサンス”が喧伝され、順風が吹いているが、この流れは停滞、世界全体が原子力再見直しに動き、一時的にせよ、世界の脱原発ムードが広がるだろう。
これが福島原発シンドロームだ。これを機会に人類はエネルギーに対する考え方を改める必要があろう。20世紀の100年間、人類は石油の恩恵に首までつかって浪費の限りをつくしたが、その時代は終わり、エネルギーを貴重な資産として珍重いなければならない時代が到来したことを知らねばならない。原子力は両刃の剣である。大規模発電、安定供給という利点はあるが、事故は取り返しのつかない大惨事につながることを知るべきだ。