2005年12月19日
イラク新政権樹立に注目
2005年12月15日、イラク全土で新憲法制下の国民議会選挙が大した混乱なく実施され、前回の暫定議会選挙をボイコットしたスンニ派も投票しました。
投票結果の正式発表は年明けにずれ込むようですが、小党が乱立しており、定数275議席の過半数を占める政党はなく、連立政権は不可避の模様です。問題は、シーア派、スンニ派、クルド人の3派の折り合いがつき、連邦制を維持できる行政府が実現するかどうかです。安定した新政権が発足できれば、米国主導の「イラクの民主化」はひとまず軌道に乗るものと期待されます。
前日の14日、ブッシュ米大統領は、イラク戦争開始の根拠としていた「フセイン政権が大量破壊兵器を保有、隠匿している」という情報が間違っていたことを初めて公式に認めたものの、「フセイン政権排除という判断は正しかった」と強弁しました。開戦の大義名分は間違っていたが、開戦そのものは正しかったというヘリクツです。そうなると、理由はどうあれ、気に食わぬ政権は打倒してよい、ということになります。ホッブスのいう「ジャングルの掟」、つまり弱肉強食が国際社会でまかり通ることになります。
このようなヘリクツに同調してはなりません。いかなる独裁政権であろうと、国際平和と安全を破壊しない限り、その政権を力でねじ伏せ、打倒してはならないのです。国連憲章は内政不干渉を規定しています。ブッシュ大統領は、イラク国民に3万人の犠牲者が出たことを認めました。はたして「民主化」のために3万人の生命を犠牲にする必要があったのかどうか疑問です。
小泉首相はサマーワ駐留の自衛隊の派遣期限延長を決意、閣議決定されましたが、イラク新政権の発足を見届けて、早期に撤退に踏み切るべきです。イタリア、韓国、オーストラリア、英国も来春にかけて順次、撤退を計画しています。
自衛隊は自らの安全を守る権限も能力もなく、サマーワ地区の治安維持は、オーストラリア、英国の両軍に委ねているのです。まず撤退して出直すべきです。治安が回復したのなら、民間のNGO(非政府組織)の出番であり、治安維持のためだけならば新しい安保理決議にもとづいてPKO(平和維持活動)に肩代わりさせ、それに参加すればいいのです。
【HP2005年12月19日】