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プロフィール

吉田 康彦

吉田 康彦

1936年東京生まれ
埼玉県立浦和高校卒
東京大学文学部卒
NHK記者となり、ジュネーヴ支局長、国際局報道部次長などを歴任

1982年国連職員に転じ、ニューヨーク、ジュネーヴ、ウィーンに10年間勤務

1986−89年
IAEA (国際原子力機関)広報部長

1993−2001年
埼玉大学教授
(国際関係論担当)
2001-2006年
大阪経済法科大学教授
(平和学・現代アジア論担当)

現在、
同大学アジア太平洋研究センター客員教授

核・エネルギー問題情報センター常任理事
(『NERIC NEWS』 編集長)

NPO法人「放射線教育フォーラム」顧問

「21世紀政策構想フォーラム」共同代表
(『ポリシーフォーラム』編集長)

「北朝鮮人道支援の会」代表

「自主・平和・民主のための国民連合・東京」世話人

日朝国交正常化全国連絡会顧問

学歴・職歴

北朝鮮人道支援の会

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核・原子力
TOP > 核・原子力 > 日印原子力協力の道をさぐれ/NPT至上主義は間違いだ

2008年3月03日

日印原子力協力の道をさぐれ/NPT至上主義は間違いだ

一時は成否が危ぶまれていた米印原子力協定がブッシュ大統領在任中に発効し、実現する見通しが強まってきた。米印協定発効の要件は、両国議会における(協定の)承認、IAEA(国際原子力機関)との保障措置協定締結ならびにIAEA理事会の承認、NSG(原子力供給グループ)全加盟国(45カ国)の承認と、次々に越えなければならないハードルが待ち構えているが、大勢は協定承認の方向に動いている。

 

NPT(核不拡散条約)非加盟国であるインドとIAEAの保障措置交渉は、初めてのケースだけに困難をきわめたが、2月末ウィーンで実質的に妥結し、これをインド議会が承認すれば締結に向けて大きく前進する情勢となった。ただし、インドに対して核燃料の供給をいかに保証するかという点はいぜんとして未解決のようだ。

 

インドが(事実上の)核保有国で、米印協力実現に際しては、軍事目的の核施設(8ヵ所)を平和利用施設と切り離し、NPTで容認されている他の核保有国(米ロ英仏中)にように、燃料を自由に補給、移動できなくなるため、米国ないし第三国による燃料供給保証が不可欠となる。米国はインドが核実験を再開したら供給を停止するとしているが、共産党を含むインドの連立左派は安全保障上の権利としてこれに反発しており、今後NSGの審議に持ち越されることになろう。

 

インド国内の論議が難航し、今年後半になると米大統領選が本格化するため、ブッシュ政権在任中の米印協定発効は見込み薄となるが、すでにフランス、ロシア、さらに中国までもがインドとの原子力協力に乗り出しており、NSGは有名無実化する趨勢にある。

 

こうした中で、原子力先進国では日本だけがNPT至上主義に固執し、NPT非加盟国であるインドとの原子力平和利用協力をめぐって逡巡しているのは主体性がなさすぎる。あまりにも教条主義的である。現時点で日印間の原子力協力はほとんど存在しない。

 

温暖化対策としての原子力見直しは時代の流れであり、インドの潜在的エネルギー需要急増を考慮すれば、日印協力が不可欠だ。現在、電力源を主として石炭に依存しているため、インドのCO2排出量が日本を凌駕するのは時間の問題とされており、温暖化対策として、インドの軽水炉増設に技術支援するのは日本の義務である。

 

NPTを支える3本柱は「核不拡散」「核軍縮」「原子力平和利用推進」であり、インドの政策はこのいずれにも合致している。インドが核保有するに至ったのは、NPTが5大国の核保有を容認している「差別性」にある。逆に、日本はNPTを”不磨の大典”とするあまり、「差別性」に目をつむり、5大国の核保有を容認している側面もあることを忘れてはならない。この点をきちんと見極めて大所高所から判断する必要がある。

【日本国際フォーラム「百花斉放」2008年3月3日】

 

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