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プロフィール

吉田 康彦

吉田 康彦

1936年東京生まれ
埼玉県立浦和高校卒
東京大学文学部卒
NHK記者となり、ジュネーヴ支局長、国際局報道部次長などを歴任

1982年国連職員に転じ、ニューヨーク、ジュネーヴ、ウィーンに10年間勤務

1986−89年
IAEA (国際原子力機関)広報部長

1993−2001年
埼玉大学教授
(国際関係論担当)
2001-2006年
大阪経済法科大学教授
(平和学・現代アジア論担当)

現在、
同大学アジア太平洋研究センター客員教授

核・エネルギー問題情報センター常任理事
(『NERIC NEWS』 編集長)

NPO法人「放射線教育フォーラム」顧問

「21世紀政策構想フォーラム」共同代表
(『ポリシーフォーラム』編集長)

「北朝鮮人道支援の会」代表

「自主・平和・民主のための国民連合・東京」世話人

日朝国交正常化全国連絡会顧問

学歴・職歴

北朝鮮人道支援の会

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核・原子力
TOP > 核・原子力 > 青島(チンタオ)からの報告---「核なき世界」を求めて

2008年11月14日

青島(チンタオ)からの報告---「核なき世界」を求めて

                

 

中国の学界6団体が協力して1年おきに開催している「国際安全保障セミナー」が今年は山東省の青島(チンタオ)で10月26日にから5日間、15カ国から140名の学者・研究者を集めて行なわれ、筆者も参加した。中国人参加者が多いのは当然として、米国から20名、韓国から7名という中で日本からは2人だけというのは淋しい限りだった。

 

秦の始皇帝から蒋介石総統に至るまで、穏やかで美しい海岸線をこよなく愛したという青島は膠州湾と黄海に面し、ドイツ風の別荘が立ち並ぶ風光明媚な保養地で、今回のテーマは、人類が核兵器廃絶と温暖化対策としての原子力を同時並行で、どう推進していけるかという点だった。

 

参加者には公認の核保有国5カ国のほかに印パ両国の学者も含まれていたが、核不拡散を守るには何よりも米ロ両国の大幅核削減が不可欠という点では全員の意見が一致し、オバマ新政権に対する強い期待が表明された。

 

冒頭の基調講演で、中国の胡小笛軍縮担当大使は、CTBT(包括的核実験禁止条約)の早期発効とFMCT(核分裂物資生産禁止条約)の締結交渉に取り組む強い意欲を表明、米国の政策転換を促すとともに、中国が核兵器の第一撃放棄(no first use)を一貫して守っている事実を強調、米ロ両国も放棄を表明するよう訴えた。

 

続いて登壇した沈丁力・復旦大学教授は「安全保障は核保有によってではなく、核放棄で確保されるという“非核の文化”を広める必要があり、朝鮮半島非核化はその真価が問われるテストケースになる」と述べ、「北朝鮮に核廃棄を迫り履行に協力させるには米側が同時行動の原則を守るべきだが、同時に日本も経済・エネルギー支援に応じることが不可欠だ」と強調した。

 

韓華・北京大学l教授も、「金正日総書記は体制存続の保証が得られれば核放棄に応じる」と断言した。

 

韓国の姜政敏スタンフォード大学教授は、「朝鮮半島非核化プロセスの仕上げには6者協議の合意に第4段階を設けて核廃棄を検証する必要があるが、そこまで進めばあとは順調に推移し、オバマ大統領訪朝で完成するだろう」と楽観的展望を述べた。

 

モンゴルのドヴヒン・ミャグマール代表は、モンゴル単独の非核の地位が国際社会に認知され尊重されている事実を強調、これが北東アジア非核兵器地帯に広がる期待を表明した。

 

ジャワハルラル・ネルー大学のラジャラマン教授は、米印原子力協定の結果、温暖化対策としての原発増設の利点を強調、「これによってインドの核戦力が増強され印パ核開発が激化する可能性はない」と断言したが、中国の対パキスタン協力にも米印並みの透明性を求めた。

 

筆者は原子力ルネッサンスを歓迎しながらも、途上国の原発依存は核技術の普及と伝播につながり、核拡散の危険性も高まる側面を指摘、不拡散は法規制と検証技術だけで担保されるものではなく関係国間の信頼醸成と国内の民主化、いわゆる「良き統治」(good governance)が不可欠である点を指摘し、大方の賛同を得た。

 

再処理とFBR(高速増殖炉)の将来についても一日討論した。筆者は六ヶ所村と「もんじゅ」の現状を報告、肯定的評価をしたが、フランク・フォン・ヒップル博士(プリンストン大学教授)は「人類はプルトニウム利用の夢を追いかけたが、仏独英が断念、日本も失敗つづきだ。ブッシュ政権も効用の少なさを見極めてGNEP(世界核エネルギー構想)を放棄した。ウラン供給は安定しており、直接処分の方がはるかに安上がりで安全だ。FBRの前途は暗い。日本だけが再処理路線をひた走っているが、障害は尽きず、いずれは撤退を余儀なくされるだろう」と断言、欧米の参加者の大方が賛成した。

 

読者の皆さん、フォン・ヒップル博士の鼻を明かしてやりたいと思いませんか。

【『電気新聞』2008年11月7日付「時評ウェーブ欄」】

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