2007年3月22日
『週刊現代』3月31日号、『週刊新潮』3月29日号の記事は間違いだらけ
私は東京都知事候補として浅野史郎支持に名乗り出たおぼえはありません。日本人拉致を「北朝鮮の犯行ではない」と断定したこともありません。とんでもないインチキ記事です。
3月19日発売の『週刊現代』3月31日号に、「櫻井よしこがすべてを聞いた『浅野史郎さん、あなたは東京をどう変えたいの』」と題する対談が載っています。その中で、浅野氏が「吉田康彦さんという大学教授も支援に名乗り出てくれているそうですが・・・」と発言、これに対し櫻井よしこさんが「『拉致は北朝鮮によるものではない』と主張し、北朝鮮寄りといわれる大阪経済法科大教授ですね」と応じています。
第一に、私が浅野史郎支持の賛同人に名を連ねた事実はありません。唯一思い当たるのは、「石原都政を終わらせる会」と称する市民団体の活動家から電話があり、「呼びかけ人」に加わって欲しいと依頼され、これに応じただけです。あくまでも「石原都政の終焉」に賛成しただけです。ところが、浅野史郎賛同人名簿には私の名前が載っています。他人の名前を勝手に使っては困ります。選挙事務所の責任ある回答を要求します。
第二に、私は「拉致は北朝鮮の犯行ではない」と主張したことは一度もありません。金正日総書記が認める前に、「証拠がない以上すべてを北の犯行と断定はできない」と疑問を呈したことはあります。また「横田めぐみさん失踪が北の犯行とは思えない」と発言したことはあります。13才の少女を拉致しても工作員教育の教師は務まらず、拉致する意味がないと考えたからです。失踪の時点で大抵の日本人がそう思いました。しかし北朝鮮は常識の通じない国でした。この点は反省し、不明を恥じています。2002年11月のテレビ朝日「サンデープロジェクト」に出演した際、横田夫妻の前で謝罪しました。いずれにせよ「拉致」そのものを否定し、「北朝鮮の犯行ではない」などと発言したことは一度もありません。櫻井よしこさんの発言は事実の歪曲です。法的措置を検討しています。
次に、『週刊新潮』3月29日号の浅野史郎氏批判記事(P28)の中で、事情通の解説として、「吉田教授は、かつて"拉致疑惑事件は韓国公安機関の安全企画部による陰謀ないしデッチあげ"などと主張していた人物」という引用文がありますが、これも横田めぐみさん失踪という特定の事件に関して、乏しい情報の中で、ある段階で発言しただけで、拉致一般を否定したわけではありません。
「横田めぐみさんの遺骨はホンモノ」とも言っていません。英国の科学雑誌『NATURE』の報道などから判断して、「ニセモノとは断定できない、すべきではない」と主張はしました。『NATURE』によると、返還された遺骨から横田めぐみさんのDNAは検出されず、第三者のDNAが出てきたが、鑑定にあたった帝京大学の吉井富夫講師(当時)みずから、これはその第三者の汗、脂などが付着していたためだった可能性もある」と認めているのです。「ニセモノと断定できないからホンモノ」ということにはならず、私もそんなことは言っていません。
北朝鮮は、「ニセモノだというなら返せ。世界の権威ある機関に鑑定してもらうから」と言っていますが、日本政府は返却要求に応じず、どこかに隠匿してしまっています。ニセだというなら、正々堂々と第三者機関の鑑定に委ねたらいいではありませんか。メディアの関係者は日本語を正確に使っていただきたい。
私は「大阪経済法科大学教授」ではなく、「客員教授」です。肩書も正確を期していただきたい。
私を「北朝鮮寄り」と評するのも誤りです。私は金正日体制を支持はしていません。ただし体制転覆を企てるのはお門違いであり、朝鮮半島の北半分を実効支配している以上、金正日体制と国交正常化し、過去の植民地氏の清算をするのが日本の国益であると確信しています。拉致の完全究明を「入口」にすえて、圧力一辺倒で国民感情に迎合している安倍首相の政策は間違っています。「怒り」と「憎しみ」をぶつけて在日朝鮮人いじめをしても、北朝鮮の政策は変わりません。最近の北京の動きを見れば、日本の北朝鮮政策の誤謬は明らかではありませんか。
日本のメディアといわゆる「識者」たちは、ことごとく「反北朝鮮」の立場で報道し、発言しています。このため内容が感情的、主観的になり、全体像が見えなくなっています。反北朝鮮か、北朝鮮寄りが、単純な二分法で色分けすべきではありません。私は、「反北朝鮮ではない」というだけです。むしろ「反北朝鮮であるべきではない」という立場です。理由は、日本の長期的、大局的国益と北東アジアの平和と民族共生のためです。
【2007年3月22日】