2007年3月08日
ますます遠のく拉致問題解決/作業部会決裂は当然の結果
3月7−8日、ハノイで開催された「日朝国交正常化に関する作業部会」は事実上決裂、主張は平行線のまま終わった。当然の結果だ。日本側は「生存者の帰還、真相究明、実行犯の引渡し」を要求、これに対し北朝鮮側は「拉致問題は解決ずみ」と従来の立場を繰り返した。
北朝鮮のような、面子を重んじる強権国家が「解決ずみ」といったん決めたことを白紙に戻し、決定を覆すことはあり得ない。宋日昊大使は「日本は死者を生き返らせて返せと無茶な主張をしている」と反論したが、「8人死亡」という発表が覆ることは絶対にあり得ない。それを期待して、「誠意ある対応をしろ」とか「戦略的決断をしろ」と要求するのは無理難題である。
確かに、拉致被害者8人の死因と死亡に至る状況には不自然な点が多く、遺骨も満足に返還されていない。しかし、それゆえに、8人 (北が「入国の記録なし」とした2人を加えると10人) が「全員生きている」という前提で生還を要求し、「それなくして拉致問題の解決とは見なさない」というのにも無理がある。一部の脱北者の不確かで、無責任な断片的証言以外に「生きている証拠はない」からだ。「死んだという証拠がないがゆえに生きている」ことにはならない。
北朝鮮政府の説明を信用せず、否定し続けることは、相手の存在そのものを否定することになる。そのような国家とは国交正常化できないということを意味している。金正日体制打倒を唱える人びとの主張そのものである。しかし、それでいいのか。それで通るのか。日本政府こそ、いま「戦略的決断」を迫られている。
他方、5−6日にニューヨークで開催された米朝交渉(「米朝国交正常化に関する作業部会」)は順調に進展、金桂冠外務次官は終始上機嫌だった。ブッシュ政権中に米朝国交正常化が実現する可能性が出てきた。中間選挙後のブッシュ政権の政策転換によるものだが、何よりもクリストファー・ヒル国務次官補と金次官との間に個人的な信頼関係が築かれたことが大きな要素になっている。個人的な信頼関係なくして、国家間の関係も前進しない。これは日朝にもあてはまる。日朝間には不信と憎悪の関係しか存在しない。それでいいのか。拉致問題がそれで解決するといえるのか。
【2007年3月8日午後6時掲示】