2004年12月13日
小泉首相の日朝対話路線維持は妥当な選択
11月の日朝実務者協議で、10名の「安否不明者」に関して北朝鮮側が提示した証拠や情報には新しいものが乏しく、特に横田めぐみさんの「遺骨」がDNA鑑定の結果、別人のものと判明したところから、日本国内では、北朝鮮に対して経済制裁実施を求める声が高まっています
私も、日本単独でも経済制裁発動は不可避の結論に達し、本欄のほか、11月16日付け「読売新聞」朝刊、11月26日のテレビ朝日「朝まで生テレビ」などで、経済制裁不可避論を主張しました。
私は、一貫して日朝国交正常化の早期実現を主張しており、日本単独の経済制裁には断固反対してきました。理由は、(1)日本みずから「平壌共同宣言」を破棄することになり、国交正常化が遠のくこと、(2)制裁は北朝鮮側の反発を招き、対話の糸が切れて、拉致問題の解明はかえって遠のくこと、(3)日朝貿易は減少傾向にあり、決定打とはならず、北朝鮮に親戚縁者のいる在日コリアンにしわ寄せが来るだけの結果になること、の三点です。
しかし今回、私が経済制裁賛成にまわったのは、日朝国交正常化を促進するためにも、いちどは強い態度に出て、日本国民の怒りを具体的措置で表明しないことには世論が納得せず、小泉首相としても国交正常化交渉再開には踏み切れないと判断したからです。
たとえ短期間でも、北朝鮮の不誠実な対応への抗議の意思表示として「制裁」することは、主権国家として時には必要です。
日本は、1998年9月、テポドン発射直後、衆参両院の北朝鮮非難決議を受けて単独経済制裁を実施し、1カ月半後に、これを撤回しています。理由は、米国はじめ中韓など関係国がいずれも制裁に反対。特にKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)を通して、北朝鮮の核開発を廃棄させたかったクリントン政権が中止を求めたからです。米国は10日間の沈黙ののち、「テポドン発射は人工衛星打ち上げだった」と発表、日本単独の制裁は宙に浮いた格好になりました。
今回、発動しても同じ経過を辿る可能性があります。ブッシュ政権としては、2月中には核問題をめぐる「6カ国協議」を再開したい構えで、そのためにも日本の単独制裁は障害になります。北朝鮮は「経済制裁は宣戦布告とみなす」と警告しており、日本の経済制裁を口実に「6カ国協議」をボイコットする、少なくとも日本の参加を拒否し、事実上ぶちこわす可能性があります。小泉首相が慎重なのもうなずけます。
以上の理由から、日本単独の経済制裁実施は当面タナ上げし、北朝鮮の出方を見守ろうという小泉首相の判断を支持します。
(2004年12月13日HP見解表明)