2008年1月11日
今年は米朝国交正常化に向かう年
朝鮮半島非核化のための核施設の「無能力化」作業は順調に進んでいる。使用済み燃料の抜き取りと廃液の浄化に2、3カ月を要するというのが専門家の分析だが、これで最低限向こう1年間は稼動再開が不可能となる。
残る全核計画の「申告」が、プルトニウム抽出総量、ウラン濃縮計画、シリアへの原子炉輸出などの核拡散の実態を含み、国際社会の疑惑を解消する結果になるかどうかが注目されるが、「同時行動の原則」に固執する北朝鮮は、「テロ支援国家」指定解除を勝ち取るためのカードとして切っている。つまり疑惑解消の交換条件としてテロ指定解除の議会への通告、敵国貿易法による経済制裁解除、連絡事務所あるいは代表部設置を要求している。米朝は「同時行動の原則」で合意している以上、当然である。
次は、米朝平和条約締結、米朝国交正常化が待っている。見返りに北朝鮮はNPT(核不拡散条約)に復帰し、IAEA(国際原子力機関)の包括的保障措置(全面的な査察)を受け入れることになっている。NPT復帰は北朝鮮が完全な非核保有国に戻ることを意味する。完全な核廃棄が条件だ。2005年9月の「6者協議」共同声明に基づいて軽水炉を提供すれば、北が前面核廃棄に応じることは疑いない。
2006年10月の南北首脳宣言は、朝鮮戦争終結の最終宣言のための4カ国首脳会談開催を提唱している。その準備のための「6者外相協議」開催、次いでライス国務長官の訪朝が取沙汰されている。
さて、どうする日本。ブッシュ政権の「テロ支援国家」指定解除は既定の方針である。拉致は日朝間の懸案であり、「懸案は誠意をもって解決する」のが『日朝平壌宣言』の合意事項だ。日本も「過去の清算」に応じ、日朝国交正常化履行の意向を示している以上、同宣言に依拠するのが当然のことだ。
拉致問題には完全な“解決”はあり得ない。拉致被害者家族にはお気の毒だが、北が死亡と発表した人びとが生き返るわけではない。中長期的国益に照らして“政治決着”を図るしかない。
昨秋から“政治決着”目指して続いている“落としどころ”の模索には日朝双方とも消極的のようだ。日本は、世論が熟していないとして水害の人道支援にも経済制裁解除にも応じず、北は米国を動かせば日本は動くと読んで、「特定失踪者」のうちの生存者帰国にも柔軟性を見せていない。
しかし、日朝が動かないと「6者協議」の枠組みも破綻し、朝鮮半島非核化も実現しないことになる。福田首相よ、小泉内閣の官房長官として水面下の交渉の陣頭指揮をとっていたあなたが早く決断しないと、解散・総選挙に追い込まれ、「歴史に名を残す」千載一遇のチャンスを逸するかもしれないではないか。
【『ポリシーフォーラム』2008年1月1日号】