2009年3月17日
人工衛星かミサイルか <論点整理>
「人工衛星」か「弾道ミサイル」かは、法的・技術的定義と解釈というより、関係国の政治的判断に左右される。
北朝鮮は「人工衛星」と発表し、「宇宙条約」など関連の国際条約に加盟、破片・残骸の落下予想海域も指定して必要な手続きを完了しているが、日米韓の3国は「弾道ミサイル」と断定して、迎撃態勢までとっている。
北朝鮮の核実験直後の国連安保理決議1718は、北朝鮮に対し弾道ミサイルのこれ以上の発射自粛を求め、ミサイル計画の放棄を安保理の総意として決定している。平和利用である宇宙開発のための「人工衛星」打ち上げはこの決議に違反していないというのが北朝鮮の主張だが、日米韓は「ミサイル計画」に含まれるという立場だ。その根拠は次の通り。
(1)発射技術が同一であり、そのまま転用できる(米中ロなどが実証済み)。若田光一さんを宇宙に運んだスぺースシャトル「ディスカバリー」も本来、長距離弾道ミサイルだ。つまり技術的には線引き不可能なのだ。
(2)しかし米ロは別途、予算を確保、人員を配置し、宇宙開発計画を立案、実施しているのに対し、北朝鮮の場合は、同一の推進体(いわゆる「テポドン2号」)に別な名称を与え、おそらく通信器材も搭載して、「人工衛星」と称しているにすぎない。真の狙いは米大陸にとどく長距離ミサイル開発にあり、米国に対する「抑止力」を誇示することにあることは明白だからだ。
(3)何よりも、北朝鮮の核・ミサイルの放棄による朝鮮半島非核化が共通の目標であることを北京の「6者協議」で(北朝鮮を含む)各国が確認し、現在、交渉途上であるにもかかわらず、米国の政権交替を機に、たとえ「人工衛星」であろうとも、北がこのような行動に出ることは、「地域の平和と安全に対する脅威」と見なされ得るのだ。つまり政治的判断である。
(4)とりわけ日朝関係は、とくに拉致問題をめぐって対立し、緊張状態にあるだけに、核・ミサイルの存在は日本にとっては脅威なのだ。だから北朝鮮が「人工衛星打ち上げ成功」と発表しても祝意を表するわけにはいかないわけだ。しかし日本の領空・領海が侵犯されない限り、「人工衛星」を迎撃するなど狂気の沙汰というべきだ。冷静な対応が求められる。