2009年5月26日
北朝鮮の核実験を”暴挙”と非難しても問題は解決しない
5月25日に実施した北朝鮮の核実験に対しては、中国、ロシアを含む国際社会の非難が集中しているが、あらたな国連安保理決議で非難し、制裁したところで、問題が解決するわけではない。北の真意と狙いを見極めて、どうすれば朝鮮半島非核化が実現できるのかを論じる必要がある。日本のメディアは相変わらず感情論を煽るばかりで、その姿勢がない。
核実験もミサイル発射実験も、体制存続の保証をオバマ米政権から確保することにある。朝鮮半島の平和と安全を仕切っているのは米国だからだ。そのために必要なことは、過去半世紀以上、”休戦”しているにすぎない朝鮮戦争を最終的終結に導く「平和条約」を米朝が締結し、国交正常化を実現することにある。”休戦”は国際法上、戦争状態継続を意味する。米朝国交正常化が実現すれば、北朝鮮は韓国に対しても優位に立ち、日本との国交正常化も実現すると、北の指導者は考えている。日本は対米追随するしかないからだ。
たとえ国連安保理で中ロが賛成して非難・制裁決議案が採択されても、とくに中国は金正日体制が不安定化し、崩壊するのを望んでいないので、従来と同様、決議の実効性には疑問があり、単なる形式上の”けじめ”としての意味しかない。それで北朝鮮の核開発と保有の動きが止まるわけではない。
とすれば、オバマ政権としては、米朝2国間協議を再開し、”検証可能な朝鮮半島非核化”の見返りとして平和条約締結、国交正常化に踏み切るしかない。その期限は2012年だ。北にとって「強盛大国への大門が開く年」であり、オバマ大統領にとって1期目の任期が終わり、再選に賭ける年である。北が2012年冒頭の新年共同社説でその意義を謳い上げるには、時間はあと2年半しかない。そこから逆算すれば北の焦りは十分にうなずける。オバマ政権としても、これ以上、放置しておけない状況になってきた。