2009年6月13日
北朝鮮制裁強化の安保理新決議案の実効性は疑問
北朝鮮の2回目の核実験(5月25日)以来2週間以上協議を続けていた国連安保理常任理事国5カ国プラス日本・韓国(直接の関係国)の計7カ国は、6月10日ようやく最終合意に達し、12日全会一致で新しい決議案1874が採択された。
最後は中国の粘り勝ちで、武器の船舶輸送を阻止するための貨物検査の義務化は見送りとなり、「禁輸品目が含まれていると信じる合理的理由(証拠)となる情報がある場合(にのみ)、港・空港などの領域内で、その貨物を検査することを(国連加盟国に)要請する」、「(公海上の場合は、)旗国(船舶の所属国)の同意を得て船舶を検査するよう(国連加盟国に)要請する」という表現に落ちついた。つまり「証拠のない臨検は武力衝突を招きかねない」という中国の主張が通ったのだ。
その他、禁輸対象品目が、単に「核・ミサイル関連物資」にとどまらず、輸出については「全兵器」、輸入については「小型武器を除く全兵器」に拡大された。また2006年10月採択の決議1718にはなかった「金融サービス提供、金融その他の資産または資源の移転防止」(金融制裁)が加えられた。
しかし「憲章41条の下で行動する」とされ、行動範囲を非軍事的措置にとどめ、武力行使を含む強制行動は除外された。
実効性を伴えば、北朝鮮は武器貿易と国際金融市場における取引ができなくなり、手足をもがれた状態になる。しかし戦後の歴史で、国連決議が字義通りに実施され、この種の制裁で政権が倒れたり、政策転換を余儀なくされたためしはない。似た例にリビアと南アがあるが、リビアには、(初期段階のウラン濃縮装置以外)核は存在しなかったし、南アは冷戦終結に伴う地域の緊張解消が最大のきっかけだった。
今回、ロシアは制裁強化に同調したが、中国は最後まで決議案に歯止めをかける役割を果たした。問題は、中国がどこまで実効性確保に協力するかにあるが、北朝鮮を追い詰め、窮地に陥れる行為は慎むだろう。中国にとって、北朝鮮のミサイル発射、核実験は国益を害する脅威ではなく、韓国、日本に核武装とミサイル防衛が飛び火しない限り、許容範囲だからだ。
いずれにせよ、北朝鮮を力で抑え込むことはできず、朝鮮半島非核化も実現しない。米朝直接交渉なくして問題の根本的解決はあり得ない。このことを中国は十分にわきまえている。