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プロフィール

吉田 康彦

吉田 康彦

1936年東京生まれ
埼玉県立浦和高校卒
東京大学文学部卒
NHK記者となり、ジュネーヴ支局長、国際局報道部次長などを歴任

1982年国連職員に転じ、ニューヨーク、ジュネーヴ、ウィーンに10年間勤務

1986−89年
IAEA (国際原子力機関)広報部長

1993−2001年
埼玉大学教授
(国際関係論担当)
2001-2006年
大阪経済法科大学教授
(平和学・現代アジア論担当)

現在、
同大学アジア太平洋研究センター客員教授

核・エネルギー問題情報センター常任理事
(『NERIC NEWS』 編集長)

NPO法人「放射線教育フォーラム」顧問

「21世紀政策構想フォーラム」共同代表
(『ポリシーフォーラム』編集長)

「北朝鮮人道支援の会」代表

「自主・平和・民主のための国民連合・東京」世話人

日朝国交正常化全国連絡会顧問

学歴・職歴

北朝鮮人道支援の会

  • 設立宣言
  • 活動実績
  • 入会申込書
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北朝鮮
TOP > 北朝鮮 > 三男・金正雲の後継指名は”事実”、しかし世襲が成功するか否かは不透明

2009年6月25日

三男・金正雲の後継指名は”事実”、しかし世襲が成功するか否かは不透明

金正日総書記の健康悪化に伴い、お気に入りの三男・正雲への世襲が噂され出したのは今年1月にさかのぼるが、それを裏づける論説や具体的な動きが本国で表面化し、”事実”であることが証明された。

6月22日付の党機関紙『労働新聞』は、「強盛大国の門前に至った今日、朝鮮人民と軍隊の精神力は、偉大な継承の歓喜で湧きかえった1970年代のように激しく噴出している」と指摘した。初代の金日成から現在の2代目・金正日に権力継承が行なわれたのは1974年(公式決定は1980年の党大会)だったが、その時と同じだ、というのだ。

最近訪朝した筆者の知人の朝鮮総連関係者も、ピョンヤンで三男指名の噂を直接耳にしており、「2月の偉業(2月16日生まれの金正日総書記の偉業)を受け継ぐ金隊長(金正雲)の足取り、タッタッタッタ・・・」と唱いながら街頭を行進する小学生の集団を目撃している。

いずれも「金正雲」という名前は出てこないが、思い当たるのは昨年11月6日付の『労働新聞』が、1967年、降仙製鋼所の近代化に貢献した若き金正日(総書記)の功績をたたえ、「(当時)赤旗を掲げて奮い立った歴史の主人公たち、彼らの平均年齢は25歳だった」と指摘している点である。この年、金正日は25歳だった。金正雲も昨年25歳(現在26歳)だ。

なぜ三男なのか。儒教の伝統に従えば長男(正男)が”本命”で、(世襲に反対の)中国も「長男なら」という意向だったとされるが、本人が望まず、彼はいわば「外部世界」との取次役、ショーウィンドー的存在となっている。次男(正哲)は内気で、引っ込み思案、芸術にしか興味がなく、父親が不適格と判断したようだ。消去法でいくと三男だけが残るが、ロイヤルファミリーに11年間住みこんだ寿司職人の藤本健二氏(筆名)によると、性格が似て、父親の一番のお気に入りだったという。

現時点では、3年後の2012年、「強盛大国の大門が開く年」に32年ぶりに党大会が開かれ、公式に後継者とし指名されるという予測が有力だが、それでも権力継承に至るまでに父親が費やした年月にくらべると遥かに短く、後継体制が定着するか否かは不透明だ。ひとえに金正日総書記の健康次第ということになろう。

それまでに、あるいはその直後でも、父親が死亡したり、あるいは執務不能になったりした場合は、たとえ三男が継承しても実権のない象徴的存在にととまり、去る4月の最高人民会議で権限が強化された「国防委員会」中心の集団指導制に移行するだろう。その場合、軍部と党人派、あるいは軍部の派閥間で熾烈な権力闘争がはじまる可能性も排除できない。

いずれにせよ、社会主義国における権力世襲は矛盾だが、北朝鮮が濃厚な儒教社会であることを顧慮すれば、それほど不可思議ではない。それに一党独裁の全体主義体制維持のためにはカリスマ指導者が必要であり、北朝鮮の場合は「血統」こそがカリスマなのだ。事実上の世襲は、インド、パキスタン、シンガポール、シリアなど、他の多くの新興国でも行われている。世襲議員の多さは日本でも問題になっているではないか。北朝鮮ばかりを批判し、揶揄することはできない。

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