2009年9月06日
鳩山”新”首相は「北」バッシング一辺倒の国内世論に風穴を!
クリントン米元大統領訪朝につづいて、故・金大中大統領葬儀に際しての弔問外交という形で南北対話が復活、残すは日朝関係だけとなった。ピョンヤンは総選挙後の日本の政権交替を注視している。
選挙運動中、鳩山由紀夫氏は「核廃絶の先頭に立つ」ために、「非核三原則」法制化の検討を約束し、核搭載米艦船の寄港をめぐる日米“密約”の真相究明を宣言した。三原則の三番目、「持ち込ませず」を徹底し遵守させれば、米国の「核の傘」は制約を受けることになりかねない。しからば北朝鮮の“脅威”に対抗できないことになる。
民主党は「北東アジア非核地帯」構想にも積極的で、岡田克也幹事長はこの構想推進の議員連盟会長でもある。「非核地帯」が実現すれば日本は「核の傘」から離脱せねばならない。朝鮮半島非核化なくして北東アジア非核化は実現しない。
どこから攻めても朝鮮半島非核化のためには日朝関係を打開しなければならない。しかるに日本政府は拉致問題の“解決”を「入口」におき、5月の2回目の核実験のあとの国連安保理決議による制裁に加えて日本単独の経済制裁をさらに強化した。関係は最悪の状態にある。
クリントン訪朝、弔問外交に先立つ玄貞恩・韓国「現代グループ」会長の訪朝にならって、拉致問題解決めざして日本政府首脳の訪朝を説く論者がいる。評論家・田原総一朗氏もその一人で、氏は「日本は100億ドル相当の経済協力を約束しているのだから、立派なカードになる」と主張するが、その前に経済制裁をどうするのか、何をもって拉致問題の“解決”とするのかをきちんと議論し、世論を納得させておかねばならない。それなくしては訪朝しても無意味だ。
日本は、小泉内閣の当時から、(1)拉致被害者全員の生還 (2)拉致実行犯の引き渡し (3)拉致犯罪全容の解明、を拉致問題“解決”の3条件と明示し、それ以来、安倍・福田・麻生と首相は3人交替したが、方針は変えていない。
こんな3条件はおよそ非現実的であることを皆わかっていながら、「家族会」「救う会」の声高な批判と彼らの背後にある“世論”が恐ろしくて看板を降ろせないのだ。「対話」と「圧力」といいながら、“世論”のあと押しで「圧力一辺倒」になってしまった。日朝間に「対話」は全く存在していない。
まもなく就任する鳩山由紀夫“新”首相に求められるものは、「北」バッシング一辺倒で膠着した“世論”に風穴を開け、何が拉致問題“解決”なのかを議論する勇気とリーダーシップだ。
それなくしては、オバマ政権が動き、米朝交渉を経て北京の6者協議が再開されたとしても、日本はただ周章狼狽し、結局は対米追随を繰り返すしかないだろう。「対等な日米関係」という民主党のマニフェストが泣く。看板倒れになれば民心は離れ、次の選挙でまた野党に戻るのがオチだろう。
≪「ポリシーフォーラム」N0.48/2009年9月号≫