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プロフィール

吉田 康彦

吉田 康彦

1936年東京生まれ
埼玉県立浦和高校卒
東京大学文学部卒
NHK記者となり、ジュネーヴ支局長、国際局報道部次長などを歴任

1982年国連職員に転じ、ニューヨーク、ジュネーヴ、ウィーンに10年間勤務

1986−89年
IAEA (国際原子力機関)広報部長

1993−2001年
埼玉大学教授
(国際関係論担当)
2001-2006年
大阪経済法科大学教授
(平和学・現代アジア論担当)

現在、
同大学アジア太平洋研究センター客員教授

核・エネルギー問題情報センター常任理事
(『NERIC NEWS』 編集長)

NPO法人「放射線教育フォーラム」顧問

「21世紀政策構想フォーラム」共同代表
(『ポリシーフォーラム』編集長)

「北朝鮮人道支援の会」代表

「自主・平和・民主のための国民連合・東京」世話人

日朝国交正常化全国連絡会顧問

学歴・職歴

北朝鮮人道支援の会

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  • 代表・役員
  • ニューズレター

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北朝鮮
TOP > 北朝鮮 > 思考停止の「対北朝鮮」政策/何が”脅威”なのかを問い直せ

2009年9月06日

思考停止の「対北朝鮮」政策/何が”脅威”なのかを問い直せ

 2つの言葉がひとり歩きしている。1つは、北朝鮮の“脅威”、もう1つは、拉致問題の“解決”だ。

 

「脅威だ。脅威だ」と既成事実にして騒ぎ立て、MD(ミサイル防衛)配備の強化、敵基地攻撃論をもてあそび、あげくのはては「日本も核武装を」という主張が勢いよく飛び出す。“脅威”が存在するのがありがたくて仕方ないようだ。

 

ミサイルが日本上空を飛び、核実験をしたからというだけで“脅威”なのか。日本上空と言っても、高度数百キロ上空は領空ではなく、すでに宇宙空間だ。「上空を飛んだ」というなら1万個もの人工衛星が日本上空を常時飛んでいる。自衛隊は「万一の事態に備えて」破壊措置命令を受けて出動したが、ミサイルは予定通り宇宙空間を飛んで、北朝鮮があらかじめ指定した太平洋上の水域に着水した。核実験も地下で爆発、地震波は伝わってきたが、放射性物質はまったく外に出なかった、少なくとも計測できなった。

 

田母神俊雄氏に伺いたい。北朝鮮は核弾頭を保有し、ミサイルに搭載して、それで日本を攻撃してくると本当に信じておられるのか。日本を攻撃してどうしようというのか。北朝鮮が日本を核兵器による先制攻撃すれば自分たちが無傷でいられると、ピョンヤンの指導者たちが考えているとでもお思いか。

 

正解をお教えしよう。北朝鮮は「アメリカの核の“脅威”を肌で感じ、これに対抗するために核抑止力が不可欠だった」と、核・ミサイル開発の理由を説明しているが、これも駆け引きで、実際にはアメリカが核攻撃をしかけてくるとは思っておらず、「核の脅威」を肌で感じているわけではない。

 

あくまでも米国と対等の立場で交渉し、半世紀以上休戦状態のままの「朝鮮戦争」を正式に終結するために「米朝平和条約」を結び、アメリカと国交正常化に持ちこむための外交カードなのだ。核保有国になれば、アメリカは譲歩し、国交正常化に応じないわけにはいかないと信じているのだ。「核保有国になる」のが最終目的ではない。北朝鮮にすれば「6者協議」など茶番劇にすぎない。

 

そこで日本。北朝鮮の核・ミサイル開発の意図を見極め、それが真に“脅威”だというなら、それを除去する外交努力をなぜしないのか。

 

日本が北朝鮮に対してしてきたことは、ミサイル発射と核実験に抗議して(実際は「日本人拉致」に対する世論の怒りを都合よく利用して)、輸出入禁止、船舶の寄港禁止、渡航禁止、送金規制と、ありとあらゆる単独制裁を課し、在日朝鮮人いじめをすることだけではなかったか。

 

安倍晋三氏に伺いたい。「圧力をかけて強く出れば北朝鮮は必ず折れてくる」とくりかえし断言しておられたが、はたして折れてきたか。日本の制裁が北朝鮮の対日政策にいかなる影響をもたらしたというのか。在日朝鮮人を苦しめているだけではないか。

 ≪「ポリシーフォーラム」NO.48/2009年9月号≫ 

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