2010年2月19日
国連高官の訪朝成果は疑問/北の狙いは対米けん制
国連のリン・パスコー政務担当事務次長が2月9日から12日まで訪朝した。滞在中、金永南最高人民会議常任委員長らっと会談し、ニューヨークに帰任後、「北朝鮮とのハイレベルの対話再開に成功した。今後数カ月のうちに国連の北朝鮮に対する関与が深まる」と述べたが、疑問である。北朝鮮は国連との協議に重きをおいてはいない。
6年前の2004年にも、モーリス・ストロング特使が訪朝、核問題打開のための仲介を試みたが、北は国連を頼りにせず、仲介工作は空振りに終わった。ブッシュ政権(当時)の圧力をかわし、対米ゆさぶりに利用しただけだった。今回のパスコー訪朝も同じ文脈でとらえるべきだ。
北朝鮮の国連不信は根強い。マルチ(多国間)の場よりもバイ(2国間)交渉を優先させるのが北朝鮮外交の特徴である。ピョンヤンにはWFP(世界食糧計画)、ユニセフ(国連児童基金)など人道援助関連機関の事務所があり、それぞれ代表が常駐しているが、援助の実績は挙がっておらず、活動は極端に制限され、”開店休業”の状態にある。ドナー(資金拠出)国が北支援に消極的だからだ。
パスコー特使は、日本政府の要請で拉致問題も取り上げたが、北からの反応はなかったという。当然である。「国連の出る幕ではない」というのがピョンヤン指導部の対応だ。韓国出身のパンキムン事務総長に対する不信感も根強い。
北朝鮮の眼中には米国しかない。オバマ政権をけん制し、ゆさぶりをかけるためのカードとして国連を利用しただけのことだ。切れるカードは多い方がいいからだ。国連を頼るくらいなら、北京の6者協議再開にとっくに同意しているだろう。
5月にはニューヨークで、5年ごとのNPT(核不拡散条約)再検討会議が開催される。現状では、イランについても北朝鮮についても、核不拡散のための実績は何ひとつ挙がっておらず、このままではオバマ政権は苦境に立つことになる。イラン説得が困難である以上、朝鮮半島非核化だけがせめても成果を打ち出せる懸案だ。まもなく3月、時間はあまりない。