2010年3月31日
注目される金正日総書記の中国訪問
金正日総書記(国防委員長)が早ければ3月末までに訪中するという情報が米韓両国で流布していたが、4月にずれ込みそうだ。しかし実現すれば、次の3点で注目される。
第1点は、健康状態。総書記は2008年8月に発症した脳卒中からは完全に回復したものの、重度の高血圧と糖尿病を患らい、さらに慢性腎不全のため透析治療を受けているという情報がある。これが事実なら、人工透析器を列車に積んで移動しなければならない事態も予想され、かなりの重症であることを裏づけることになる。米情報では、余命3年半という観測もあり、中国訪問を無事にこなせるかどうかは総書記の今後の健康状態の行方を占うカギになる。また同時に、3代目の三男・金正銀(キム・ジョンウン)への権力継承のピッチが今後早まるかどうかの手がかりにもなるだろう。
第2点は、金正日訪中から北朝鮮が改革開放の向かうかどうかの方向性も見えてくる。中国は昨年10月、温家宝首相訪朝の際、総額100億ドル相当の支援を約束したといわれるが、あくまでも改革開放の導入が条件になっているとされている。金正日訪中が実現すれば、中国は経済開放の成果を誇示し、総書記に北朝鮮における実践を迫るものと見られる。総書記には、これが体制維持と両立するかどうか、まだ迷いがあるようだ。何を見て、いかなる心境で帰国するかが焦点になる。
第3点は、訪中の過程で中国首脳と会談し、その結果が6者協議再開につながるかどうかだ。現時点では、6者協議はまず4月ごろ予備会議が開かれ、本格協議再開は5月以降という説が有力だが、総書記の訪中後に、これらの日程が具体化するものと観測されている。すべては議長国・中国の説得にかかっている。
北朝鮮が6者協議復帰を渋っているのは、国連安保理制裁解除と米朝平和協定締結を前提条件にしているのに対し米側がこれを拒否しているからだが、中国が米朝双方のメンツを立てる形の妥協案を示すことができるかどうかがカギを握っている。北京滞在中の中朝の首脳レベルの協議で行き詰まり打開に成功すれば中国外交の大勝利だ。