2010年10月08日
党主導の先軍政治は不変――権力継承後の北朝鮮の行方
北朝鮮の世襲権力新体制が発足した。三男・金正恩(金ジョンウン)を金ファミリーが総出で支えていこうとする悲壮な決意がうかがわれる。中心人物は金正日総書記の実妹金敬姫と夫君(義弟)張成沢だ。金敬姫は後継者に指名されたジョンウンと同格の「大将」に任命され、党の役職も「政治局員」になった。夫の張成沢は最高執行機関「国防委員会」副委員長ではああるが、党の役職は政治局員候補にすぎない。いずれにせよ、文字通り、ファミリーが表舞台に登場した。
このことは何を意味するか。軍の意向を最優先させる「先軍政治」は不変。内外の政策も当面変化しそうもない。「先核放棄」もありそうにない。体制生き残りをかけた核抑止力は死守するだろう。
「封建制の名残り」として権力の世襲に反対していた中国も最終的に世襲を容認し、胡錦涛主席みずからジョンウン王子を面談したようだ。オバマ米政権はピョンヤンの権力継承を静観しており、米朝関係を動かす意思はない。動きがあるとすれば、北朝鮮内部で権力構造に変化が生まれる時だ。具体的には、金正日総書記が死亡ないしは執務不能に陥った時だろう。短期的には、内外情勢とも変化なし、中長期的には波乱含みというところか。ポスト金正日の時代になれば、朝鮮半島に大波乱が起きるだろう。権力闘争が起き、「金王朝」は3代で終わりを告げるだろう。古今東西、集団指導制が円滑に機能したた試しはない。
そうしたなかで、日朝関係はまったく動く気配がない。拉致問題に「解決」はあり得ないし、政治家もだれも手を出す動きはない。小沢一郎訪朝計画も「まぼろし」と消えた。