2007年10月21日
「反」北・右翼評論家の断末魔のあがき/潮匡人に反論する
米朝和解で日本の孤立化が際立ち、右派ナショナリストは周章狼狽している。彼らの常套手段は国内に“敵”を見つけ出し、誹謗することにある。「日本のマスコミや学界には今なお金正日サポーターが少なくない。彼らの頭の中にはいつも日本とアメリカが悪者だ」と称して、潮匡人が『SAPIO』10月10日号で、私を冒頭から槍玉に挙げている。支離滅裂な論理だ。
(1)まず私は「金正日サポーター」ではない。北東アジアの現実を紹介し、6カ国協議で日本が孤立している事実を指摘しているにすぎない。「日本とアメリカが悪者」も見当違い。善悪の判断はしていない。強いていえば、対「北」政策転換したアメリカは「正しい」のだ。日本が「悪い」のではなく、安倍前政権の北朝鮮政策が間違っていたのだ。
(2)「北朝鮮による日本人拉致疑惑を、韓国安企部による情報操作に踊らされたなどと発言」というのも不正確。私は「日本人拉致疑惑」(全体)を疑問視したり、否定したことは一度もない。横田めぐみ失踪についてのみ疑念を表明したことがあるだけだ。13歳の少女を拉致しても日本語・日本人化教育の教師は務まらず、(未成年のため)パスポート申請もできず拉致する意味がないと判断したからだ。そこまで北朝鮮(の工作員)が非常識とは思わなかったからだ。横田めぐみ拉致疑惑浮上の時点で、ソウルで辛光洙は逮捕され、死刑判決を受けていた。拉致を否定しようがないではないか。
(3)「金正日を支援し続けた韓国の太陽政策は核実験という最悪の結果につながった」というのも事実誤認。「支援」と「核実験」は無関係。北朝鮮の眼中にあるのは米国のみ。核実験をしたのはブッシュ政権に対する揺さぶり。この揺さぶりが成功したのだ。
(4)拉致と過去の清算を同時並行で解決するという「出口論」を批判しているが、それこそ9月5−6日モンゴルのウランバートルで開催された日朝作業部会で打ち出した日本政府の態度そのもの。すでに安倍政権下の日本政府も「出口論」を採用し、路線転換したではないか。私の主張は「北の主張そのもの」と批判しているが、北は「拉致は解決ずみ」として「過去の清算」だけを求めているではないか。事実誤認も甚だしい。
(5)「祖国を貶め、ひたすら北朝鮮を擁護する」と言うが、私は少しも「祖国」を貶めてはいない。日本を愛し、長期的国益を考えているからこそ、日本政府の国連外交、あるいは対「北朝鮮」外交を批判しているにすぎない。とくに安倍政権下の日本外交は「北」に対する怒りと憎しみの国民世論に迎合しすぎた。逆に私は北朝鮮、あるいは金正日体制を「擁護」したことは一度もない。北東アジアの平和と安全に朝鮮半島非核化、北朝鮮の核放棄は不可欠と考えており、6カ国協議の成功を切に望んでいる。「北」は異様な全体主義体制だが、まずこの現実を受け止め、交渉相手として認めて懸案を外交的に解決しようという場が6カ国協議なのだ。
【HP2007年9月26日―10月12日】