2009年10月20日
錦秋のミディ=ピレネー再訪に欧州の変化を見る
10月11日から19日までの1週間あまり、大西洋岸のワインの産地ボルドーを起点にフランス南西部のミディ=ピレネー地方、ラングドック地方、さらにバルセロナ中心のカタロニア地方に足を延ばし、錦秋の南欧の旅を楽しんできました。奈良県で悠々自適の年金生活を楽しむ旧友夫妻と2家族の4人のレンタカーによるドライブ旅行でした。
1970年代にジャーナリストとして、80年代に国連職員として、通算13年間ジュネーヴに滞在していた私にとって、この地方は気候温暖、人情素朴、グルメ趣好を満足させてくれる豊穣の地です。ただし20年以上を経て再訪してみて、様変わりした点がいくつかありました。
第一に、この地方にとくにイスラム教徒のアラブ人、アフリカの黒人が増え、サービス業従業員、肉体労働者の半数近くを白人以外が占めている印象を受けたことです。詩人ポール・ヴァレリーの故地セートはあたかも地中海の反対側のアルジェリアかモロッコの港町のようでした。前々回のフランス大統領選挙では、外国人排斥を叫ぶ右翼政治家ジャン=マリ・ルペンが決選投票でシラク候補と争うほどの勢いでしたが、それもむべなるかなと思われました。
第二に、ドライブしていて目に付いたのは、風力発電用の3枚羽根の風車があちこちに林立していたことです。EU(欧州連合)は2020年までに全発電量の20%以上を風力・太陽光で満たす公約を掲げており、欧州各地には風車と太陽エネルギー集光用のシリコンパネルが並んでいます。とくにスペインにおける自然エネルギーの普及はめざましく、ドイツに次いで欧州第2位の発電量を誇っており、シェアはすでに全体の30%に達しているようです。
第三に、EU域内の地上では国境が消滅したことです。フランスからスペインに入国する際も、その逆でも、税関と国境管理の建物は存在してはいても、税関吏と出入国管理官の姿はなく、あらゆるクルマがフリーパスで自由に往来していることでした。変化するのは標識の文字くらいですが、スペイン東部のカタロニア語はフランス語に近いのであまり違いがわかりません。
その典型が、仏西両国にはさまれてピレネー山中に息づいている小国アンドラです。人口7万のアンドラは自由貿易国で、首都アンドラ市には免税品を売る店が軒を並べ、活況を呈しています。まもなくスキーシーズン。欧州各国からスキー客が殺到するらしく、新築のホテルと色とりどりのマンションが山腹に立ち並んでいました。スイスよりも物価が安く、免税品が買えるというのがセールスポイントになっているようです。