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プロフィール

吉田 康彦

吉田 康彦

1936年東京生まれ
埼玉県立浦和高校卒
東京大学文学部卒
NHK記者となり、ジュネーヴ支局長、国際局報道部次長などを歴任

1982年国連職員に転じ、ニューヨーク、ジュネーヴ、ウィーンに10年間勤務

1986−89年
IAEA (国際原子力機関)広報部長

1993−2001年
埼玉大学教授
(国際関係論担当)
2001-2006年
大阪経済法科大学教授
(平和学・現代アジア論担当)

現在、
同大学アジア太平洋研究センター客員教授

核・エネルギー問題情報センター常任理事
(『NERIC NEWS』 編集長)

NPO法人「放射線教育フォーラム」顧問

「21世紀政策構想フォーラム」共同代表
(『ポリシーフォーラム』編集長)

「北朝鮮人道支援の会」代表

「自主・平和・民主のための国民連合・東京」世話人

日朝国交正常化全国連絡会顧問

学歴・職歴

北朝鮮人道支援の会

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教育・文化
TOP > 教育・文化 > 五輪、国連、ノーベル賞/物理学賞受賞者の国籍問題

2008年10月18日

五輪、国連、ノーベル賞/物理学賞受賞者の国籍問題

テレビのワイドショーを見ていたら、キャスターが神妙な顔で、「残念なニュースがあります」と前置きして、「ノーベル物理学賞受賞が決まった南部陽一郎氏は米国に帰化しているのでアメリカ人としてカウントすることになり、日本人受賞者の数が1人減り、4人が3人になりました」という。それを聞いて思わず苦笑、失笑した。国籍が米国でも南部氏が日本人であることに変わりないし、米国メディアがアメリカ在住の日本人学者の受賞を祝福してくれるのは喜ばしいではないか。

               

私は旧著『国連改革』(集英社新書)に「五輪、国連、ノーベル賞」という1章をもうけ、日本人が過大評価し、一喜一憂する対象として、この3者に共通項があることを指摘した。(最近の現象として付け加えるならば「世界遺産」ブームがある。世界遺産に登録されるかどうかで国をあげて大騒ぎするのは日本だけだ。)

 

滞米・滞欧生活13年の私が日本社会にいまだに違和感をおぼえるのは、オリンピックのメダル獲得数に異常な執念を燃やすことだ。これなどはスポーツだからご愛嬌だが、国連の権威も過大評価し、政治家や新聞記者がブトロス=ガリ事務総長(当時)詣でをして、次々に「日本は憲法改正してもPKO(平和維持活動)に自衛隊を派遣すべきか」とお伺いを立てるという珍現象が起きた。最近、日本人の国連信仰はかなり衰退した。理由は事務総長が韓国人だからだという穿った見方がある。

 

3番目のノーベル賞もその権威を過大評価し、日本人の受賞に対する執着が強すぎる点ではオリンピック並みだ。メディアは五輪と同じ感覚を持ち込み、星取表もどきの国別番付などを掲げるから冒頭のキャスターの「残念なニュース」になるのだ。物理学賞共同受賞の益川敏英氏はメディアの狂奔ぶりを評して、いみじくも「これは社会現象だ」と述べたが、日本独特の社会現象である。海外で研究実績をあげ、定住している日本人学者は枚挙にいとまがない。国籍など無関係だ。経済だけでなく、学界(とくに自然科学界)はグローバル化しているのだ。日本人の受賞をまるで国威発揚のメルクマールのように思い込む錯覚からそろそろ脱却したらどうか。

【日本国際フォーラム「百花斉放」2008年10月17日】

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