2007年1月23日
イラク増派で墓穴を掘るブッシュ大統領
ブッシュ大統領は1月10日、2万強の米兵をイラクに増派、イラク治安部隊を強化して治安回復に努め、11月末までに撤退の目途をつける方針を明らかにした。強気一点張り、強硬策一本槍の愚策だ。
ブッシュ氏は「イラク情勢は自分にとっても、米国民にとっても受け入れ難いものだ」と述べた。「受け入れ難いもの」にしたのはブッシュ政権そのものではないか。しかも数十万のイラク国民を殺し、3000人以上の自国民をも犠牲にしたのだ。フセイン政権を排除し、サダム・フセインを処刑してみたものの、シーア派とスンニ派の宗派対立を激化させ、泥沼の内戦状態を造り出している。
イラク治安部隊はシーア派兵士で構成され、スンニ派掃討にばかり意欲を燃やしている。治安部隊にはシーア派民兵組織が多数入り込んでいる。彼らにイラク国民としての和解と協調を求めるのは無理。フセイン政権下の抑圧に対する報復しか念頭にない。米国という外部勢力が復讐心に火をつけたのだ。米兵はシーア派からも憎しみの対象になっている。米国は結局、治安回復に失敗、イラクを見捨て、投げ出して撤退する羽目になるだろう。
ブッシュ大統領は、イラン、シリアという近隣のイスラム国と対話するよう求めた超党派の「イラク研究グループ」の勧告を無視し、力による解決にのみ活路を求めた。ブッシュ大統領はイラクで墓穴を掘り、最低・最悪の大統領として歴史に名を残すことになろう。22日のCBS世論調査で、ブッシュ支持率は就任以来最低の28%を記録した。
私は反米主義者ではない。しかし米国が国連を無視し、単独行動主義を振りかざし、おのれの価値観とシステムを押しつけるやり方には絶対反対だ。イスラム社会にはイスラムの歴史と伝統と掟(おきて)がある。彼らの主体性を無視して、米国流の自由と民主主義の押し付けをしたことに最大の誤算があったのだ。
【2007年1月23日HPカバーに掲載】