2007年2月19日
「北京合意」は北朝鮮外交の勝利/孤立する日本
(1)北京の6カ国協議における最終合意は、?朝鮮半島非核化の段階的実現を取り決めていること?北朝鮮に「見返り」を約束している点で、1994年の「米朝枠組み合意」と基本的に変わりない。クリントン政権が締結した「枠組み合意」を破棄したのは北朝鮮側であると決めつけ、「悪行に報酬は与えない」としていた米朝直接交渉を拒否してきたブッシュ政権の全面的譲歩であり、北朝鮮の「瀬戸際外交」の勝利だ。
(2)「枠組み合意」と異なる点は、「北京合意」が単なる「凍結」でなく、最終的に「すべての核施設の無力化」を合意事項として明記し、北朝鮮もこれに同意したことだ。これが履行されれば朝鮮半島非核化が実現することになる。その他、「北京合意」の特徴は次のとおり。
*北朝鮮が「体制生き残り」を重視し、米国によるテロ支援国家指定の解除ならびに敵国通商法の適用除外の作業開始を約束させたこと(「枠組み合意」にも規定があったが、米側は全く履行しなかった)
*初期段階の措置を実現するため、米朝・日朝国交正常化に関する作業部会設置で合意したこと
*北東アジアの平和と安全のメカニズムに関する作業部会設置で合意したこと
などが指摘できる。
(3)ただし、すでに兵器化された核物質(プルトニウム)の扱いとウラン濃縮計画の存在について、今回の合意では具体的に言及されておらず、今後の懸案である。現段階では、何よりも相互不信を克服し、信頼を回復することだ。北京合意には、北朝鮮が主張してきた「約束対約束、行動対行動」の原則が全面的に取り入れられており、お互いの行動を確認しながら、次の措置に進む段取りになっている。その点で、合意が一方的に破棄されることはないだろう。査察の実施、「見返り」の履行をめぐって紆余曲折が予想されるが、これで朝鮮半島非核化のロードマップは出来上がったと見てよい。
(4)問題は「拉致」にこだわる日本の出方だ。「拉致問題の全容解明なくして国交正常化なし」という安倍内閣の北朝鮮政策は行き詰まっている。解決に向けての展望が見えてこないどころか、「北京合意」履行をめぐって5カ国の足並みを乱すことにしかなりかねない。「拉致解明なくしてエネルギー支援なし」という態度も各国の賛成を得にくく、孤立するばかりだ。重ねて言うが、拉致解決を日朝国交正常化交渉再開の「入口」にすえるのは間違いだ。核・ミサイル・拉致の同時包括的な解決を求める「出口」論以外に解決策はあり得ない。
【HP Cover Story 2007年2月14−19日】