2009年1月12日
断末魔の麻生首相訪韓は不毛なパフォーマンス
読売・朝日・共同通信・JNN(TBS系)の最新の世論調査によれば、麻生内閣支持率の下落傾向は止まらず、20%ないしそれ以下に低迷しており、国民の”麻生離れ”は決定的になった。そうした中で、首相は1月11−12日訪韓し、李明博大統領との蜜月関係を強調したが、同行記者によると、韓国政界の関心はすでにポスト麻生の日本の次期政権に移り、解散・総選挙の時期をしきりに知りたがっていたという。内容空疎な訪韓だったと言わざるを得ない。
とくに北朝鮮の核問題解決に6者協議を活用し、そこで日米韓の協力推進を再確認したというのは、何の新味もない。拉致問題解決のために韓国の協力を求め、李大統領も理解を示したというのも、全く無意味だ。李大統領にすれば、耳にタコができるほど聞いてきたセリフであり。頼む相手を間違えたといわざるを得ない。
南北関係は冷戦期に逆戻りしたように冷却化しており、政府間対話は完全に遮断されてしまっている。金剛山観光事業は中止、開城公団は細々と「現代」グループの手で継続しているだけで韓国政府職員は全員追放された。南北鉄道輸送も中断。韓国NGOが風船を北に飛ばして、金正日総書記の病状や私生活を暴露するチラシを散布したこと直接の原因だが、背景としては、李明博氏が大統領就任前から、採算を度外視した南北協力に否定的で、金大中・盧武鉉両政権を「失われた10年」と表現したことにある。「非核・開放・3000」(核廃棄し、市場を開放すれば、北の国民所得を年間3000ドルに引き上げてやる)という李構想にも、北は内政干渉として強く反発した。
平壌との対話のルートを失った日韓両国首脳が核や拉致の解決で協力するというのは、実際に何をどうしようというのか。北の対日・対韓分断作戦に対抗するためというが、平壌指導部の念頭には米国しかないというのが過去9回に及ぶ私の訪朝体験で直接確認しているところだ。北朝鮮にとっては、1にアメリカ、2にアメリカ、3、4がなくて5が中国、なのである。拉致問題では自力で日朝対話を再開し、直接交渉すべきだが、他国に頼むとすれば、やはり米国しかないのだ。
平壌はいま20日のオバマ大統領就任に熱いまなざしを送っている。金正日にとって、日韓など眼中にない。「日韓はアメリカの傀儡(かいらい)。ワシントンを動かせば、東京とソウルは簡単に動く」と彼は信じている。 【日本国際フォーラム「百花斎放」】