2009年4月09日
「最高人民会議」開幕と北朝鮮「人工衛星」打ち上げの意味
9日に開幕した最高人民会議(日本の国会に相当)で、金正日総書記が「国防委員長」(国家機関の最高ポスト)に再選され、3期目(1期5年)の金正日体制がスタートした。朝鮮中央テレビはこれを「重大発表」として予告し、全人民の関心を呼び起こして、ものものしく発表した。
「人工衛星」打ち上げは、(病気回復後の)同総書記の新たな門出を祝い、ミサイル開発に従事した軍部の労をねぎらい、同総書記の下に再結集を図るという意味があったのだ。このことは、”全快”した金正日国防委員長が少なくとも今後5年間”続投”し、名実ともに指導者(独裁者)として君臨することを意味する。
その背景には、金正日氏がダウンしたため党と軍部の間で後継者をかつぐ動きが活発になり、長男(金正男)、二男(金正哲)、三男(金正雲)をそれぞれ推挙する勢力が主導権争いを演じて内部対立を深めていたという事情があるようだ。各派閥の思惑を秘めて後継者指名決定の断片的情報が流れ、日本の週刊誌を賑わわせたのは、このためだ。
これで当面、後継者推挙の動きは止まり、北朝鮮は2012年の「強盛大国の大門が開く年」に向けて動いて行くだろう。2012年は、オバマ大統領の1期目の任期満了の年でもある。それまでに米朝関係を正常化したいというのが双方の目標であることは間違いない。
「最高人民会議」開幕に先立って、朝鮮中央テレビは7日夜、人工衛星「白頭山2号」打ち上げの瞬間と金正日総書記の動画映像を公開した。総書記の動画映像は、昨年8月、脳卒中に見舞われて病臥したと言われて以来はじめてだ。とくに後者の11月と12月の現地指導の映像は、左手とおそらく左脚にも麻痺が残り、リハビリ中であることをうかがわせた。
それだけに「人工衛星」打ち上げで彼の病気回復を祝い、元気な姿を人民に見せて、人心統一を図ったのだ。大半の論者は、「発射の狙いはオバマ米大統領の関心を引き、交渉のテーブルに就かせるためで、これで交渉カードを1枚増やしたことになる」としたり顔で解説していたが、そうではない。それは副次的効果だ。米大陸に近い距離まで飛ばすことのできるミサイル開発に成功すれば、核弾頭ともども、文字通り「核抑止力」を確保したことになり、交渉上優位に立つことを否定はしないが、それなら、発射はいまこの時期でなくてもよかったはずだ。
オバマ大統領は、就任間もなくスティーヴン・ボズワース元駐韓大使を北朝鮮担当「特使」に任命して米朝協議に備えた。ボズワース特使は早速訪朝を申し入れ、「その代わりミサイル発射を延期して欲しい」と要請したところ、北朝鮮側はこれを拒否、「訪朝に及ばず」と無言の回答をしたという。これは何を意味するか。どうしてもこの時期に打ち上げたい国内事情が存在していたのだ。