2009年4月29日
「朝鮮半島非核化」実現は2012年/金王朝は徐々に集団指導体制に移行
朝鮮半島非核化の展望は、金正日体制の余命が重要なカギを握ることになった。昨年8月、金総書記が発症した脳梗塞は、本人の健康のみならず、北朝鮮の体制維持に深刻な後遺症をもたらした。
金正日”国防委員長”は、4月9日に開幕した第12期最高人民会議に“元気そうな”姿を現したが、病み上がりであることは一目瞭然だった。直前の「人工衛星」打ち上げは、彼自身の健康と体制の“健全ぶり”を内外に誇示する景気づけだったが、これは事実上、義弟の張成沢を中心とする集団指導体制への移行を示すものでもあった。
北朝鮮は儒教社会主義といわれる特殊な体制の国家で、金日成を始祖とする個人崇拝の統治システムを確立しただけに、体制維持のためにはシンボル的な存在にせよ、ポスト金正日にも後継者が必要と思われる。しかし金正日の子息の誰が指名されるにせよ、彼が実権をもつことはなく、集団指導体制下で徐々に中国あるいはヴェトナム型の民主化と改革開放が導入され、体制は存続する可能性が高い。つまり、近い将来の現体制転覆、南北平和統一の可能性は低い。
「朝鮮半島非核化」は本来、金日成が提唱したものだ。冷戦終結後20年、その間の北朝鮮の核開発で、意味合いが違ってきた。現時点では「北の核廃棄」が関係国の共通の関心事となり、2005年9月19日の6者協議共同声明で再確認された。
オバマ米政権は、朝鮮半島が核拡散の拠点とならなければ、北の完全核廃棄は要求せず、平和条約(あるいは不可侵条約)を結び、米朝国交正常化を実現するだろう。
リビアやイラクのように、開発の初期段階ならいざしらず、核実験し、ひとたび保有した核の完全廃棄など不可能、拡散しなければ無害というのがオバマ政権の現実主義だ。核というものは、既存の弾頭が廃棄され、全施設がIAEA(国際原子力機関)の査察下に入っても、核物質は天然に存在し、技術は残る。北朝鮮はアジア最大のウラン鉱山を有する。
北朝鮮の核開発は、実戦に使用したり、核保有国としての特権を行使したりするためではなく、終始、米国との外交交渉カードが主目的だった。朝鮮半島には米軍の核攻撃の脅威が残っており、米側が非核化に応じないなら、抑止力として核弾頭と運搬手段としてのミサイル配備を実用化せざるを得ないという立場だ。
1991年、盧泰愚大統領が「核不在宣言」をしたが、北は信用していない。在韓米軍の基地査察を要求しているが、そんなことが実現するとも思っていない。米朝国交正常化が実現すれば、米軍の核の脅威は消滅し、核装備は不要となるという立場だ。
北朝鮮が体制の存亡をかけてオバマ政権と四つに組んで交渉し、結果が出る日は遠くない。その日は「強盛大国の大門が開く」2012年にやってくる。オバマ大統領の1期目の任期切れの年でもある。
【『ポリシーフォーラム』N0.46/2009年5月号】