2013年2月24日
米朝相互不信克服の方途
北朝鮮の核開発と核保有を阻止する特効薬は存在しない。時間をかけて信頼関係を構築していくほかない。
最近退任したヒラリー・クリントン氏は国務長官在任当時、米朝国交樹立の条件として、再三「先核放棄」を要求していたが、対米不信感の強い北朝鮮には通用しなかった。北朝鮮は世界中を敵国にしており、とくに、過去に米国に騙された記憶の連続で、容易に外国を信用しないが、”トラの子”の核弾頭を手中にした現在、これを先に放棄するつもりはまったくない。
現状では、北朝鮮は対米「核抑止力」に必死でしがみつくだろう。
方策としては、一歩ずつ段階的に信頼関係を築き上げていくほかない。そのためには、まず人的交流を盛んにして、個人間の信頼関係を設けていくことだ。私自身の過去10回の訪朝経験からいえることは、朝鮮民族はメンツにこだわり、名誉と対面を重んじるが、同時に信義を重視し、信頼には信頼で応えようとする点だ。信頼関係の構築は個人レベルでは不可能ではない。米国人でも、リチャードソン元メキシコ州知事のように、過去に何度も訪朝をくりかえして、個人的信頼関係を保っている政治家もいる。
どのかわり、一度相手に信頼されたら、決してこれを裏切ってはならない。米朝間に人脈のパイプを通し、そのパイプを太くすることだ。日朝間には、野中広務、山崎拓氏らのように、過去に北朝鮮の高官との人脈を保っていた人物が存在したが、両氏とも政界を引退し、今は皆無に近い。それだは、拉致問題の解決もおぼつかない。