2008年8月13日
拉致「再調査」で日朝関係進展は望み薄
8月11−12日、瀋陽で開催された日朝実務者協議で、拉致被害者の再調査と制裁の一部解除(人的交流とチャーター便乗り入れ)で合意したが、再調査の結果、拉致問題が”解決”に向けて大きく前進する可能性は少ない。
再調査は、日朝関係打開をうながすブッシュ政権の圧力で、北としては米国に”義理立て”しているにすぎず、何回調査をしたところで、新事実が出てくるわけではない。むしろ現体制下では、新事実を明らかにするわけにはいかない、というのが真相に近い。北朝鮮という国は、どこに誰が住んでいるか、すべて党と政府が掌握している社会だ。
いわゆる特定失踪者とされる日本人が北朝鮮に生存していることは確かなようだが、北が彼らを出してきて帰国に応じるとすれば、それは日本側が制裁を全面的に解除し、「日朝平壌宣言」を履行し、国交正常化に応じるという確証を得たときであろう。彼らの存在は北に残された貴重なカードだからだ。
再調査完了を「今秋」としたのは、6者協議における「無能力化」の完了が10月31日となっているのを睨んでのことであろう。その間、功を焦るブッシュ政権がテロ支援国家指定解除後の「見返り」を出してくれば、再調査結果にも色をつけて、日朝関係を前進させる配慮をするだろう。しかし日本側が望むような拉致問題の”解決”は不可能だ。
拉致被害者家族らは、再調査開始時点で制裁の一部解除に応じたことに異議を唱えているが、拉致問題そのものが日朝両国の政府間交渉の議題であり、駆け引きの対象となっている以上、「行動対行動」の「同時行動の原則」にしたがって、日本も何らかの対応措置をとるのは止むを得ない。