2010年4月08日
黄元書記と金元死刑囚の訪日は拉致問題解決には逆効果
黄長?〔火ヘンに華〕(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記は4日間の日本訪問を終えてソウルに戻ったが、何のための訪日だったのか、疑問を呈さざるを得ない。日本国民の最大の関心事である拉致問題に関しては、「拉致された日本人が通訳として使われていたのを知っていた」という程度で、何の新情報も持ち合わせず、問題の解決に役立つような発言はなかったようだ。
何しろ厳重な警戒態勢の下で自由な取材も講演の聴講も認められず、その内容にも「何の新味もなかった」と、いわば身内の産経新聞までもが批判的な記事を掲載している。日本国民の間に、さらなる反「北」感情を盛り上げるのが事実上の目的だったとしても、その目的も果たせなかったことは確実だ。
中井恰拉致問題担当相は、「拉致問題を解決するには、相手の国をよく知らねばならない。黄元書記の訪日は北朝鮮という国を理解する上で有意義だった」と強がりの発言していたが、黄の過去の発言は、金正日体制打倒をめざす政治的主張ばかり、それすらもメディアを通じて国民に全く伝わらないというのでは、何のために日本に招いたのか、関係者に問いただしたい。
中井拉致問題担当相は、金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚(元北朝鮮工作員)を来月、日本に招待する計画を韓国政府相手に進めていると伝えられるが、彼女を招いても拉致問題の”解決”には何ら役立たず、むしろ逆効果であることを訴えたい。
金元死刑囚は、拉致被害者・田口八重子さんに日本語を習い、日本人化教育を受けたとされているが、1987年に祖国(北朝鮮)を離れ、大韓航空機爆破事件の犯人として韓国当局に逮捕され、ソウルに連行されて以来23年間不在なので、拉致被害者の消息についての情報は何ら持ち合わせていない筈だ。工作員養成のための訓練を受けていた頃の思い出話を語る以上の役割は期待できない。
要するに、2人を日本に招いても反北・反金正日キャンペーンを盛り上げる効果しか期待できない。しかも黄元書記訪日は何の効果もなかった。「救う会」「家族会」はキャンペーン効果だけを狙っているのだろうが、拉致問題そのものの”解決”には何ら役立たないことを知るべきだ。
もし鳩山内閣が、拉致・核・ミサイルの包括的解決をめざし、金正日体制を対話と交渉の相手と認めるなら、犬の遠吠えのような虚しいキャンペーンを繰り返すよりも、むしろ首相特使を平壌に派遣して、過去2年間中断状態にある日朝対話を再開し、相手も受け入れ可能な解決策を模索すべきだ。
そのために必要なことは、万景峰号92の新潟寄港許可など、対話再開のための雰囲気作りだ。黄元書記の訪日も、金元死刑囚の招待計画も、そうした流れに反する動きだ。