2010年9月25日
中国人船長釈放は妥当な措置
尖閣諸島沖で中国の漁船が日本の海上保安庁の巡視船と衝突し、逮捕された中国人船長を日本側が釈放したのは、諸般の事情から妥当な措置だった。相次ぐ日中交流事業の中止、中国滞在中の日本人逮捕、希少金属レアアースの対日輸出禁止など、中国側の一方的な強硬策で実害を蒙っているのは日本であり、「無理が通れば道理引っ込む」世界に迷い込んでしまったからだ。
国際法には強制力がなく、しばしば強者の論理がまかり通る。国家の意思を強引に通そうとする中国の手法を押しとどめる「正義」は脆弱だ。13億の人口を背景に強大な新興国の主張を振り回し、なりふり構わず資源確保に狂奔する中国政府の思惑が透けて見える。
外交上は日本側の完敗であり、日本人の国民感情としては屈辱的だが、この際、日中の友好関係維持を優先させるのが賢明と判断した菅内閣の決定は正しい。
菅内閣の決定といっても、菅首相、前原外相はニューヨークの国連総会出席中で不在、実際は仙谷官房長官が決定を主導したようだ。これに対し、野党は一斉に屈辱外交として反発しており、来週再開される国会における論戦の行方が注目される。