2010年10月08日
脆弱性を露呈した日中関係――尖閣諸島沖における日中衝突事件が残したもの
ブリュッセルにおける”即興の”日中首脳会談は日中関係の悪化をひとまず食い止め、問題解決を先送りしたが、改めて日中関係の脆弱性と不安定性を露呈した。尖閣諸島の帰属をめぐって「日中間に領土問題は存在しない」というのが日本政府の立場だが、「尖閣諸島は中国固有の領土」というのが温家宝中国首相の主張であり、領土問題では平行線をたどった。
中国における反日運動は休火山のごとき存在で、ささいな口実で発火し、広がりやすい。拡大する経済・社会格差に対する民衆の不満のはけ口という側面もある。2005年の日本の国連安保理常任理入り運動を阻止しようとする反対運動はその好例で、インターネットでまたたく間に中国全土に広がり、国民運動に発展した。かといって、中国は民主主義国ではなく、国家の(為政者の)意思で民意はいかようにも動く。それだけに舵取りが難しい。
今回の尖閣諸島問題で明らかになったことがある。昨年9月、政権の座に就いた鳩山由紀夫首相は、日中主導の「東アジア共同体」構想をぶち上げたが、この構想はあえなくしぼみ、まぼろしと消えてしまったことだ。日中両国民のヘゲモニー争いが強く、根強い相互不信が存在するので、これを克服するのは容易ではない。中国社会の民主化が進み、民主主義が成熟することも条件になる。